出版社内容情報
第2篇『花咲く乙女たちのかげに』第2部の全体を収録。
内容説明
前巻から2年後、「私」は避暑地バルベックで夏を過ごすことになる。個性的な人びととの交流、そして美しい少女たちとの出会い。光あふれるノルマンディの海辺で、「私」の恋は移ろう…。全篇の中でも、ひときわ華やかな印象を与える第二篇第二部「土地の名・土地」を収録。
著者等紹介
プルースト,マルセル[プルースト,マルセル] [Proust,Marcel]
1871‐1922。フランスの作家。パリ郊外オートゥイユで生まれる。パリ大学進学後は社交界へ出入りするかたわら文学に励む。三十代の初めに両親と死別、このころから本格的にエッセイやラスキンの翻訳を手がけるようになる。1912年、『失われた時を求めて』の原型ができあがり、1913年第一篇「スワン家のほうへ」を自費出版。その後もシリーズは続き、1922年第四篇「ソドムとゴモラ2」が刊行されるが、気管支炎が悪化し、全七篇の刊行を見ることなく死去
高遠弘美[タカトウヒロミ]
1952年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。明治大学教授、フランス文学者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
43
「私」は、バルベックでアルベルチーヌと「花咲く乙女たち」に出会う。 この物語を読んでいると、走馬灯のように人生の様々な出来事が思い出される。 そして、読むほどに自分の姿が露わになってくる。 もちろん、思い出すのは楽しい思い出ばかりではない、それどころか、むしろ「苦しきことのみ多かりき」なのだが、僕にとってはこの物語自体が紅茶に浸したマドレーヌの働きをしている様なのだ。/2021/06/10
SOHSA
37
《kindle》高遠版再読。ジルベルトとの別離。バルベックへの出立と後の日々。ヴィルパリジ夫人、サン・ルー、アルベルチーヌ等々新たな出会い、流れゆく時間。情景に柔らかな光の静寂が加わることで読み手に時そのものを想起させる。光と時間の相関。その描写は現在進行形ではなくあくまで回想の視点を確保した上で。高遠版の楽しみのひとつは巻末の読書ガイドにもある。訳者による解説と参考文献の紹介は失プルの世界を何倍にも拡げてくれる。唯一の難は刊行がかなり遅れていること。果たして全巻完訳まで私自身待ち切れるのだろうか。2018/12/04
SOHSA
32
《Kindle》かなり時間をかけての読了。バルベックで過ごした季節とそこでの少女たちとの出会い。ジルベルトとの離別を時間が少しずつ癒すにつれ、主人公をまた新たな恋へと導いていく。やはり大きな事件は起こらない。淡々と流れていくひとコマの季節の中で、主人公の心の動きを緻細に描いていくばかりだ。作品の中での時間はあまりにゆっくりと流れる。まるで作者が過ぎ行く時を惜しむかのように。まさに「失われた時」に対する郷愁のようだ。読み手も作者の紡ぐ一言一言をじっくりとかみしめながら頁を捲る。2016/12/09
かもめ通信
26
年に1冊のペースでゆっくりと読み進めているのは、光文社古典新訳版の『失われた時を求めて』。あいかわらず一気に読むことはせず、あちこち寄り道し、行きつ戻りつしながら読んでいる。読みどころは多々あるが、なんといってもこの巻の圧巻は画家エルスチールの描いた絵の描写。ただひたすら文字を追い、描かれているのがどんな絵なのか想像する楽しさはもうそれだけで至福のひとときを約束してくれる。 2020/01/06
おおた
25
プルーストを読むのは果ての見えない広大な風呂に浸かるようなもので、その風呂では水中でも呼吸ができる。どこまでも沈んでいってどこまでも温い。本作では女子大好きな語り手がぷちハーレム状態になって、いそいそと海岸に繰り出す。タイトル通り「花咲く乙女たちのかげ」で一夏のヴァカンスを過ごす甘やかさが魅力。後書きにもあるようにあらすじではなく、プルーストを読む体験というのが最高の愉悦であることがさすがに4巻まで読むとわたしにも会得できてきたようです。2020/02/22