出版社内容情報
1912年に発表されたアメリカの児童文学。いまだに女子小中学生を中心に「必読書」「愛読書」となっている名作を。
内容説明
孤児のジュディは文才を認められ、ある匿名の紳士の援助を受けて大学に通わせてもらえることに。新たな環境で発見と成長の日々を送りながら、ジュディは「あしながおじさん」と名付けたその紳士に、お茶目な手紙をせっせと書き送るが…。世界中で愛読される名作を新訳で。
著者等紹介
ウェブスター,ジーン[ウェブスター,ジーン] [Webster,Jean]
1876‐1916。米国ニューヨーク州出身の小説家。母は文豪トゥェインの姪で、父はトゥエインのビジネス・パートナー。寄宿学校時代に18歳でアリスからジーンに改名。名門女子大ヴァサー・カレッジに進み、経済学と英文学を専攻する。在学中、新聞に「女子大生のおしゃべりコラム」を連載して好評を博すと、卒業後、その文体を活かした初の小説『パティ大学に行く』を出版。一方、社会改革にも深い関心を持ち、イタリアの貧困問題を取り上げた小説『小麦姫』も執筆している
土屋京子[ツチヤキョウコ]
1956年生まれ。東京大学教養学部卒。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
108
子供の頃に読んだ『あしながおじさん』。新訳ということで手にしました。面白かったです。匿名の紳士の援助で大学に通うことになったジュディ。条件は学園生活を手紙で送ること。その手紙がお茶目で可愛くて、生き生きと学園生活を送っているのだなと思いました。目を輝かせながらジュディの語る話を聞いているような気分になります。懐かしい気持ちと共に楽しい気分でいっぱいになりました。最後の手紙がやっぱりキュンときますね。2015/11/01
巨峰
74
どろどろに汚れきった私でも読中なんだかこころが洗われているような清涼感があった。ジュディが文学志望の学生ということで、書簡中に 名作が話題としてとりあげられているのが嬉しい。それらを既に読んだ人にも過日の思い出を呼び起こすような素敵な感想。そして大学教育に対する興味を子供たちにおこさせる教養主義的な小説だと思った。ジュディの可変モビルスーツのような変幻自在の文体を、いきいきと訳した訳文が素敵。土屋京子さんには「秘密の花園」の素晴らしい翻訳があります。2015/07/27
ナマアタタカイカタタタキキ
67
児童文学として名高いが、必ずしも子供向けではなく、当時のフェミニズム運動の影響が色濃く反映されていて、女性の自立や尊厳が本来のテーマでもある。移り気で愛らしい孤児院出身の少女が、自分の大学生活を支えてくれる教育援助家のおじさまに宛てた手紙を通して、物語は展開する。ユーモラスなその手紙は、外の世界での様々な出会いに対する喜びや驚き、学生生活を謳歌できる幸福感で満ち溢れており、こちらまで幸せな気持ちになる。自分の境遇を嘆かず、感謝の心を忘れず、真っ直ぐに成長していく少女の姿を通して、己を省みずにはいられない。2020/04/16
シュラフ
51
なにかと鈍い私ではあるが、途中から"あしながおじさん"の正体はペンドルトン氏だと見破った。自らの正体を隠しつつ相手に接近して、相手の本音を引き出すというのも少しいやらしくないか、というのが本音の感想。でも、ジュディが良しとするなら、それはそれで結構。物語の根底には、社会的弱者に対する救済はいかにあるべきか、という社会福祉の問題がある。この物語では、支援によって孤児であるジュディという女性が自立を目指すというもので、社会的な弱者支援の思想がある。ブルジョアを嫌悪し、社会主義を賛美する様が見られ、興味深い。2017/09/30
ふじさん
44
早く読むべきだったと心底後悔した傑作。当然概略には事前知識もあったが、実際の作品に当たるとまた大きく印象が異なり、良い意味で予想外。書簡体の形式で綴られる主人公の日常は、自由に開かれた世界へ踏み出し始めた喜びと煌めきに満ち満ちており、それだけでも胸に迫る物があった。訳文が巧いのかお喋りな女学生の話し言葉が見事に表現され、更には『文体練習』めいた実験的な諧謔まで盛り込まれて一瞬も飽きない。一切の邪念なく、おじさんになった感覚で微笑ましく読んでいた為オチには若干複雑な想いもありつつ、肉親を持たない孤児の少女→2021/11/30