内容説明
18世紀末、商船から英国軍艦ベリポテント号に強制徴用された若きビリー・バッド。新米水兵ながら誰からも愛される存在だった彼を待ち受けていたのは、邪悪な謀略のような運命の罠だった…。アメリカ最大の作家メルヴィル(『白鯨』)の遺作にして最大の問題作が、鮮烈な新訳で甦る。
著者等紹介
メルヴィル,ハーマン[メルヴィル,ハーマン][Melville,Herman]
1819‐1891。アメリカの小説家。マンハッタンの商家に生まれる。銀行員、小学校教師などを経て、1841年に捕鯨船アクシュネット号に乗り組み、太平洋での捕鯨に従事する。翌年にマルケサス諸島で船から逃亡し、タイピー渓谷に滞在。その後も捕鯨船や軍艦を乗り継ぎ、1844年に帰国。続く数年間に、船員時代の体験を元に小説『タイピー』『オムー』などを執筆、1851年には『白鯨』を発表し名声を博す
飯野友幸[イイノトモユキ]
1955年生まれ。上智大学文学部教授。アメリカ文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takaichiro
101
物事はクリスタルの様に光の当て方によって見え方が変わる。真実は一つなんて表現があるが、解釈一つでどんな形にも作りあげられる。きな臭い中東情勢のニュースを見ていても、何が事実なのか一市民ではわからない。フェイクニュースとマスコミを叩くかの大統領は自ら描いた戦略実行の為、都合よく作りあげたストーリーをSNSを通じて口外し、歴史に残るでっちあげをやらかすかもしれない。本書ではなにが正義かよりも、誰の正義かが問われる世界観を人の息遣いが聞こえるようなリアル感で描く。我々は不確実な社会に生きているのだと実感する。2019/07/11
ペグ
90
未だ「白鯨」に手をつけられないでいる自分は、でもやはり、あの「バートルビー」の作者の筆による「ビリー・バッド」に惹かれて手にとる。人間とは〜純粋であったり正直であることが別の人間にとっては憧れ、尊敬が嫉妬に変わりひいては殺意にまで至るものなのだろうか。四方を海に囲まれた船の中での事件を裁かなければならない船長の苦悩の決断。メルヴィルの不条理は奥が深い。2022/01/31
マエダ
69
ただ善の象徴にしか見えない平面的なビリーと狡猾だが人間臭く、その心理の機微を深く書き込まれたクラガート。誰しもが認めたくはないが、現実を孕んでいるのが本書。2019/04/02
マエダ
57
!?おもしろくない?ちょっと意図が汲み取れない。2018/10/04
巨峰
55
不条理な悲劇としか言い様がない。司法官たる艦長が、艦内の秩序を守るため条理を尽して考えた結果が一人の人間の悲劇となるとは。条理とは不条理を覆い隠すためにあるのか。2013/09/16