内容説明
フラッグと名づけられた仔ジカは、ジョディの無二の親友となった。だが、育ちざかりのフラッグは次第に一家の大事な畑を食い荒らすようになり、父はジョディに厳しい決断を迫る…美しくも苛酷な自然の中で、逞しく生きる人々の姿を力強く描いたアメリカ文学屈指の名作。
著者等紹介
ローリングズ,マージョリー・キナン[ローリングズ,マージョリーキナン][Rawlings,Marjorie Kinnan]
1896‐1953。アメリカの小説家。ワシントンDCに生まれ、子どものころから創作コンテストに度々入賞し才能を発揮する。大学を卒業後、新聞記者となるが、作家としては芽が出なかった。1928年、旅行でフロリダ半島の奥地を訪れ、原生林の残る自然に感動し、居を定める。以後はこの地方を舞台にした小説を生み出し、1938年の「The Yearling」がベストセラーとなり、ピュリッツァー賞を受賞する
土屋京子[ツチヤキョウコ]
1956年生まれ。東京大学教養学部卒。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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なる
30
人間は誰かの命を奪い、時にはそれを頂きながら生きている。それは生きている限り抗えないこと。それを少年の目線から真摯に描きながら、周囲の大人が歩んできている道を、社会とのつながりを丁寧に教えてくれている。愛玩するだけでは成り立たない人間と動物との関係。それを身をもって教える大人の目線は優しくも厳しく、大自然の中で生きる人たちの覚悟を伝えてくれる。水がどれだけ大事なものなのか、水に恵まれた国に生きている自分たちでは漠然としかわからないその価値も伝わってくる。不穏な空気もありながら人間の温かみにも触れる。2022/12/31
ROOM 237
16
厳しくも豊かな大自然の四季、狩りを通し動物の生死を自ら決断する少年の葛藤と成長が沁みる良書。野生動物を人間の欲で一方的に閉じ込める疑問と、少年と父(これが本当に良いお父さん…!)の狩りで結びついた深い絆が成せる歩み寄りが読みどころ。食糧問題が起きる度に対処法を編み出す逞しさに目を見張る、それは餓えに直結するからだ。人も動物も平等の環境下での自給自足生活は、人の持つ不便を改善する力と料理の知恵に驚きの連続で楽しめた。熊や狼狩りにハラハラし、クタクタで帰ったら沢山のご馳走が待っている暖かさの対比も良い。2023/02/04
市太郎
6
「人生とはいいものだが、人生は人間をぶちのめす。立ち上がるとまたぶちのめす。ぶちのめされたらどうするか?それが自分の背負うものだと受け止めて前に進むしかないんだよ」少年の成長を通じて自然との共生の難しさを伝える傑作だった。この物語に出てくる自然は人生と置き換える事も可能だろう。まさに少年の人生はこの自然の中にあるのだから。2013/05/14
Ayanosuke
4
胸が抉られるような気持ちになりました。2013/01/24
くりかのこ
4
読み終わってからずっと(といってもまだ半日しかたってないけど)この作品のこと、特に最後のあたりのペニーの言葉が頭から離れない。それだけいいインパクトのある物語だった。2013/01/11