内容説明
ソクラテスの裁判とは何だったのか?ソクラテスの生と死は何だったのか?その真実を、プラトンは「哲学」として後世に伝える。シリーズ第3弾。プラトン対話篇の最高傑作。
著者等紹介
プラトン[プラトン][ΠΛΑΤΩΝ]
427‐347B.C.。古代ギリシャを代表する哲学者。アテネの名門の家系に生まれる。師ソクラテスとの出会いとその刑死をきっかけに哲学の道に入り、40歳ころには学園「アカデメイア」を創設して、晩年まで研究・教育活動に従事した。ソクラテスを主人公とする「対話篇」作品を生涯にわたって書き続け、その数は30篇を超える。その壮大な体系的哲学は、後世の哲学者たちに多大な影響を及ぼした
納富信留[ノウトミノブル]
1965年生まれ。慶應義塾大学文学部教授。英国ケンブリッジ大学古典学部にてPh.D取得。西洋古代哲学・西洋古典学専攻。国際プラトン学会前会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さゆ
211
無知の知で有名なソクラテスが死刑宣告されるまでの裁判が描かれる。ソクラテスによれば、(実際はプラトンの創作らしいが)死というのは怖れるものではないのだという。それは、死というものを人間は誰も知りえないにも関わらず死を知った気になるから怖れるのであり、知らないことを自覚する無知の知を実践していないことになる。私たちも明日や将来のことで不安になるけれど、未来のことは誰にもわからない。~なるだろうと未来を予想してしまうのであれば、わからないことは知りえないこととして怖れる必要はないのだと感じた。2024/06/17
takaichiro
125
プラトンが描くソクラテスの「知への愛」に触れるごとに、襟を正される。不知であり、だからこそ常に学べ。智者はこの精神を最優先に、知を極め続ける必要がある。今では当たり前の学校制度。斯様な精神が無ければ義務教育の発想さえ生まれていないのでは。光文社古典新訳文庫は当たりが多い。本作では本編の他に100ページにも及ぶギリシャ哲学・プラトン対話篇の解説、ソクラテス他の年譜、訳者あとがきを収録。岩波ブランドに負けず作品を充実させたいとの編集者の思いを強く感じる。知に挑み続ける姿勢を本全体で表現している様にも・・・2020/02/17
けんとまん1007
97
ソクラテスの弁明・・このタイトルを知ったのは、いつだろう?ようやく、手にした。謙虚に冷静に自分のことを捉えることができるだろうか・・。それにしても、ソクラテスの論理の展開は出色だと思う。翻訳のおかげだろう、随分、読みやすく、哲学書である前に、一つのものがたりとして読むことができた。しかし、ここまで論理的に抑え込まれると、人間は、その逆に向かうのだろう。そこが、弱さ・脆さでもあるし、そのために、どれだけの犠牲を払ってきたのだろう。2021/06/06
molysk
83
ソクラテスの弁明は、プラトンによる対話篇。ソクラテスは、不敬神と、若者を堕落させた罪で告発され、裁判で弁明する。自分は知恵がないと思っており、知恵を巡って他者を吟味した。しかし、誰も知恵を持たぬことを自覚していない。その真実こそが、私の中傷、告発の原因だろう。それでも、私は他者への問いかけは止めない。肉体や物に拘泥する人々に、真に配慮すべきはよりよい魂と気づかせるために。弁明に拘わらず、ソクラテスの有罪と死刑が宣告される。知恵は神のものであり、人間としての不知を受け入れる、として科白は締めくくられる。2019/09/25
ナマアタタカイカタタタキキ
82
(「まあ、そりゃあ死刑になるよな…」というのが、本編を読み終えて最初に浮かんだ感想なのは置いといて)巷で言う「無知の知」を表すとすれば「不知の自覚」が正しいらしい。その時代背景や常識を前提として書かれているこのようなものを手に取るに当たって、こうも充実した解説があるのは心強い。さもなくばたちまち、本書でいう「無知」に陥るだろう。この裁判の時点でソクラテスは70歳とあって、解説には“年少の子はメネクセノスという名で、ソクラテスの死にあたって、まだ抱かれているほど小さかった”ともある。死ぬまで現役だったのか…2020/04/28