内容説明
両親を亡くし、英国エセックスの伯父の屋敷に身を寄せる美しい兄妹。奇妙な条件のもと、その家庭教師として雇われた「わたし」は、邪悪な亡霊を目撃する。子供たちを守るべく勇気を振り絞ってその正体を探ろうとするが―巧緻きわまる構造から紡ぎ出される戦慄の物語。
著者等紹介
ジェイムズ,ヘンリー[ジェイムズ,ヘンリー][James,Henry]
1843‐1916。ニューヨーク生まれ。裕福な家庭に育ち、幼い頃から家族とともにヨーロッパ各地に滞在、芸術の鑑識眼、多言語・多文化に通じるコスモポリタン性を身につける。1862年、ハーバード大学ロー・スクールに入学するも翌年退学。’64年、物書きとしてデビュー。’76年ロンドンに移住、以後、ロンドンを中心に活動。’78年、短編小説「デイジー・ミラー」を発表、英国文壇で絶賛される
土屋政雄[ツチヤマサオ]
翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
131
登場人物たちの異常状況下における心理描写と駆け引きに翻弄され、そして圧倒させられました。同時に、亡霊を含む登場人物各々の言動がとても怖かったというのが印象的でした。2024/06/24
優希
118
恐ろしさの漂う空気を感じずにはいられませんでした。両親を亡くした兄妹の元に雇われた「私」が亡霊を目撃するというのはホラー小説にありがちな気もしますし、そういう意味ではホラー小説の古典とも言えるのかもしれません。亡霊に操られる兄妹と彼らを救おうとする「私」。亡霊はたまにしか姿を見せないことが精神の崩壊につながっていくように見えました。「文学史上最も恐ろしい小説」とは誇張とも言えますが、そう言うに値するだけの恐怖小説のような気もします。2017/01/22
アナーキー靴下
109
幽霊を見たのは誰か…? お気に入りの方が『金の鍵』のレビューで引用していた、W・H・オーデンの「自分が想像した世界を、五感で受け取る事実から成り立つ世界と同一視してしまう人は、正気を失う」という言葉や、最近立て続けに起きている物騒な事件が浮かび、最初から最後まで家庭教師の幻想として一元的に捉えてしまった感はある。クリスマスイブの怪奇譚に集う面々は下品な詮索好きにしか見えないが、家庭教師も言葉にしないだけで同じ部類なのだと。この物語を解釈しようとしたり、知らず知らずニュースの事件の背景を想像する私もである。2021/10/17
harass
100
ガーディアン紙の100冊。別訳で読んでいたがこれで再読。美しいが神経過敏な女性家庭教師の主観の手記による、「幽霊物語」。シンプルで短めの本で、読んでいて、まどろっこしさを感じるのは、語っていることが本当なのか彼女の幻想や思い込みなのかと断言せずに宙ぶらりんにしているため。語り口は読んでいて、キングやシャーリー・ジャクソンなどや、「ローズマリーの赤ちゃん」を連想した。物足りなく感じるところもあるが、1898年の作品で古典として読まれるのもわからなくないと感心する。名作。2018/11/20
takaichiro
99
テキストのねじが巻かれる度に、心が深く固く締まっていく^_^様々な要素が複雑に絡み少しずつ傾きながら斜め右下にゆっくり引っ張られる様な怪綺譚^_^わかりづらい!複雑な社会構造から生み出される階級間の越えられない壁、心の奥に潜むセクシャリティの微妙なズレなど言葉やロジックではハッキリ書き出せない事象をミックスしねじ込んだらこんな感じ?わかりやすさは大事^_^でもわかりにくさをわかりにくいまま表現するのも素敵。クセになる^_^いろいろ散らかした後に全てを無にする終わり方もいい^_^ヨーロッパ文学は奥が深い!2019/07/19