内容説明
妖しい月光の下、継父ヘロデ王の御前で艶やかに舞ってみせた王女サロメが褒美に求めたものは、囚われの美しき預言者ヨカナーンの首だった―少女の無垢で残酷な激情と悲劇的結末を鮮烈に描いた傑作が、作家・平野啓一郎の新訳で甦る。宮本亜門による舞台化原作。
著者等紹介
ワイルド,オスカー[ワイルド,オスカー][Wilde,Oscar]
1854‐1900。アイルランド出身の作家・劇作家。外科医で著述業の父と、作家である母との間に次男として生まれる。自身の唱える芸術至上主義を身をもって実践し、ロンドン社交界で脚光を浴びる。29歳で結婚。話題作を次々と発表し時代の寵児となるが、同性愛の罪で逮捕・投獄される。出獄後フランスに渡るも、3年後の1900年、パリにて客死
平野啓一郎[ヒラノケイイチロウ]
1975年愛知県生まれ。京都大学法学部卒業。小説家。1999年、在学中に『日蝕』で第120回芥川賞を受賞。以後も『葬送』、『決壊』(芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞)、『ドーン』(Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞)などの意欲作を発表。各国で翻訳紹介されている。エッセイ、評論などの分野でも活躍。『サロメ』が初の翻訳(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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クプクプ
87
平野啓一郎の翻訳が肩の力が抜けていて、それでいて情熱的で、魂のこもった、絶妙な作品に仕上がっていました。戯曲としても、私にとってはシェイクスピアより数段、読みやすかったです。本文の後に、平野啓一郎の訳者あとがきが載っていますが、他のどの本よりも平野啓一郎がサービスして本音を語っているので、読む方は非常に得をした気分になりました。個人的に、運命の出会いだった北杜夫の「どくとるマンボウ航海記」以来の、私にとって2冊目の運命の一冊になりました。航海記から20年経って、運命の出会いは平野啓一郎訳の戯曲だったとは。2024/03/18
巨峰
65
平野啓一郎訳ということで話題のサロメの新訳。意外に読みやすくて、解り易い訳だと思う。短いし。まぁ、読み込めばいろいろ深いのでしょうね。ただ、本文が80ページなのに大量の解説等々を上乗せして750円超という価格にしたのはどーなんだろう?!と光文社には疑問を呈しておこう。無邪気だけど同時に残酷なある種の少女としてサロメが描かれている。2012/04/22
molysk
64
王女サロメが、祝宴での踊りの報酬として義父ヘロデに求めたものは、預言者ヨカナーンの首だった。新約聖書では、母である王妃へロディアが、不義の婚姻を非難した洗礼者ヨハネの処刑をサロメに唆したとする。無知で従順なサロメ。ワイルドの戯曲におけるサロメは、淫靡な毒婦、豪奢で耽美で幻想的。これが従来のイメージだった。本書では、訳者の平野啓一郎が、ワイルドの表現したかったサロメに立ち返るとして、少女的で愛らしく純真、だが母親から身に覚えのない淫婦性を受け継いだ存在、言い換えればキリスト教の原罪を担う存在として描く。2019/11/29
yumiha
63
「ヨカナーンの首を所望したサロメ」という大まかな捉え方だったので、悪夢を呼びそうなおどろおどろしさは苦手、とこれまで敬遠してきた。でもオスカー・ワイルドは、どう描くのだろうと本書を開いた。結論から言えばよかった。平野啓一郎の訳も註も後書きもよかった。これまで我儘娘の気まぐれサロメ、あるいは上から目線のヨカナーンと切り捨ててきたが、違う姿で見えてきたからだ。またひたすら難解!と思って来た『日蝕』も、違う見方ができた。田中裕介の丁寧な解説も、宮本亜門の見方も、納得できるものがあって、エエ本を購入できたと満足。2020/08/21
財布にジャック
60
ギュスターヴ・モローの「出現」という絵を思い出しました。その絵を観た時は何の場面なのか知らなかったのですが、これを読んでドキッとしました。こんな短い文章なのに忘れられない凄いインパクトのある内容です。狂気という言葉がこれ程までにしっくりとくるお話も珍しいです。2014/02/24