出版社内容情報
街はいよいよ狂乱に向かって突っ走りはじめた。まずは県知事夫人ユーリアの肝いりによる「慈善パーティ」で、何かが起こる気配。その背後では着々と陰謀が進行し、「五人組」の活動も風雲急を告げる。ワルワーラ夫人とヴェルホヴェンスキー氏、スタヴローギンとリーザの「愛」の行方は? 生き残るのは誰か
内容説明
街はいよいよ狂乱に向かって突っ走りはじめた。まずは県知事夫人ユーリヤの肝いりによる「慈善パーティ」で、何かが起こる気配。その背後では着々と陰謀が進行し、「五人組」の活動も風雲急を告げる。ワルワーラ夫人とヴェルホヴェンスキー氏、スタヴローギンとリーザの「愛」の行方は?愛と悪、崩壊と再生のクライマックス。
著者等紹介
ドストエフスキー,フョードル・ミハイロヴィチ[ドストエフスキー,フョードルミハイロヴィチ][Достоевский,Ф.М.]
1821‐1881。ロシア帝政末期の作家。60年の生涯のうちに、巨大な作品群を残した。キリストを理想としながら、神か革命かの根元的な問いに引き裂かれ、ついに生命そのものへの信仰に至る。日本を含む世界の文学に、空前絶後の影響を与えた
亀山郁夫[カメヤマイクオ]
1949年生まれ。東京外国語大学長。ドストエフスキー関連の研究のほか、ソ連・スターリン体制下の政治と芸術の関係をめぐる多くの著作がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
105
最終巻に来て、物語は急展開を見せ、クライマックスとして読ませます。今までの曖昧な展開は何だったのだろうと思わされます。狂乱に向かい、走り始めた街。慈善パーティーで起きそうな謎。陰謀が進行する中で誰が生き残るのか。対立する思想、精神的絶頂を求める慈しみ、登場人物たちの崩壊などの様々な顔と本能的な悪の同居。これらの全ての恐ろしさに引き込まれずにはいられませんでした。狂っていて破壊的だけれど面白かったです。2016/11/23
榊原 香織
64
実際の事件が元、とのことだけれど、何でこうどうしようもなくなっていくのか。 主人公スタヴローギンのモデルの一人は無政府主義者バクーニンらしい。 コケにされた文学者のモデルはなんとツルゲーネフ。個人攻撃だな2023/04/21
星落秋風五丈原
63
2巻でありがたい助言を貰っておきながら、戻れない道を突き進むスタヴローギン。レビャートキン大尉の執拗な手紙に悩まされてきたリーザの懇願にまけて明言する。「不幸にしてこの男とは縁戚関係にある。この男の妹で旧姓をレビャートキナという女性の夫になって5年になる。」本作で頻繁に顔を出すロシア批判を交えつつ、市長夫人の催したパーティが悲惨な結果に終わる様へとなだれ込む。パーティで朗読を頼まれたのに、自分の恋バナを延々とやってブーイング浴びる作家カルマジーノフのモデルはツルゲーネフだそうだ。 2022/10/28
たかしくん。
57
奇怪な行動な続く登場人物たちが軒並み死んでゆく、全くもって救われないストーリー展開。中身が薄っぺらな撹乱者ピョートルが悪霊の仕掛人であることは間違いないですが、最後までその正体がつかめず不敵な結末を迎えるニコライは、悪霊の真打ちというべきでしょう。数少ない癒し系のステバン氏のラストが、精々救われるところかもです。やはりドストエフスキー最高の問題作であり、しかも後のソ連のスパイ密告社会を予言するかののような、良い意味で後味の悪い作品でした。また、「告白」を当初の順番に加えたこの編集はナイスでした!2016/01/31
市太郎
53
悪霊がとりつき、崖から湖になだれこみ溺れ死ぬがごとく破滅していく人々。集団ヒステリー、疑心暗鬼の末の醜態、盲目、殺人、自殺、幼稚な思想、ペテン師の卑劣な行い。狂気そのもの。自分の運命も知らず、新しく生まれてくる他人の生命と愛する人の為に律動する姿は、エネルギーに溢れ美しい。そして「この子は僕の子だ」と叫ぶ。陰惨な事件の裏でドストエフスキーの「美は世界を救う」という想いが垣間見える。「人生の一分一分、一刻一刻が人間にとって至福の時でなくちゃならない・・・」「だれも責めてはならない、ぼく、自身だ」破滅と救済。2013/11/11