内容説明
歌の練習に明け暮れ、声を嗄らし喉を潰すこと、三度。サブ・カルチャーが台頭した中世、聖俗一体の歌謡のエネルギーが、後白河法皇を熱狂させた。画期的新訳による中世流行歌100選!「わたしはバカな女です」「マリーのひとりごと」「わが子ゆえの嘆き」「も一度抱いて」etc。
目次
しだれ柳と下がり藤
ギャンブラーの好むもの
わたしにはやさしいあなた
いつでもいるわ
あなたの約束忘れない
わたしはバカな女です
女にゃ五つの罪がある
わたしとあなたの住む家は
いとしいひとは
あなたが帰ったわたしの部屋に〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
120
名高い古典を川村湊氏が大胆に現代語訳したもの。「君が愛せし綾藺笠 落ちにけり落ちにけり」は「あんたの 愛したアヤイ笠 落ちちゃった 落ちちゃった」と訳されている。分かりやすいが原文の持つ香気を失っている気がした。とは言え、私のように古文がまったくダメな人間には有難い本で、『梁塵秘抄』の内容が大まかに掴めたのは良かったと思う。いつかこの本と、原文しか載っていない岩波文庫を読みくらべてみたい。2016/01/17
fseigojp
26
こんなに意訳して、いいんかい? でも、無類に面白い!2016/01/12
かふ
22
何やらタイトルが難しそうだが、中世の「今様」(流行歌)なのである。当時は乱世の変革期で世は貴族文化から武士の世へ。そのなかで後白河法皇 が貴族も武家も嫌だと思ったのか、上流よりも下流志向の遊び女や芸人たちと戯れていた。ただそれは宗教的な意味合いもあったようで、現実世界よりも異世界への憧れだったようだ。例えばカラオケボックスで流行歌を歌いながらこの世の憂さを晴らすというのは、誰もが経験することかもしれない。後白河法皇の潜んでいた宮廷で、もう貴族も武家社会もうんざりしていたのかもしれない。2022/06/12
AN
18
平安時代に京都を中心に流行した「今様」という歌謡を集めた歌謡集。当時の社会の下層にいた遊び女などの芸能民が唄っていたものを、時の法皇の後白河法皇が編纂。本書はその歌謡集の現代語訳だが、令和の人にも感覚として理解出来るようなポップな訳になっているところが興味深い。上流階級が嗜んだ和歌とは形式が異なり、リズム感や感情表現に豊かな唄が多く、平安時代のサブカルチャーを満喫できる一冊だと思う。2023/09/05
きゅー
14
11世紀から12世紀の間に京都を中心に流行した「今様(いまよう)」を収録した歌謡集。編纂者は後白河法皇。今様の主たる担い手は白拍子、遊女、傀儡女などの社会の下層民であったこともあり、内容は卑猥であったり、猥雑なものもかなり含まれている。それらを法皇が集め、歌っていたというのだから寛容な時代だったのだろう。さて、本書の目玉は訳者による超訳だが、これがあまりにひどい。センスが古すぎる。「遊びオンナの好きなもの/ブルース演歌にドラムのピッチ/ポートのデートに大きなパラソル女の舟漕ぎ/オトコを手招くキューピッド」2020/08/31