内容説明
最近わたしたちの町で、奇怪きわまりない事件が続発した。町の名士ヴェルホヴェンスキー氏とワルワーラ夫人の奇妙な「友情」がすべての発端だった…。やがて、夫人の息子ニコライ・スタヴローギンが戻ってきて、呼び寄せられるように暗い波乱の気配が立ちこめはじめる。
著者等紹介
ドストエフスキー,フョードル・ミハイロヴィチ[ドストエフスキー,フョードルミハイロヴィチ][Достоевский,Ф.М.]
1821‐1881。ロシア帝政末期の作家。60年の生涯のうちに、巨大な作品群を残した。キリストを理想としながら、神か革命かの根元的な問いに引き裂かれ、ついに生命そのものへの信仰に至る。日本を含む世界の文学に、空前絶後の影響を与えた
亀山郁夫[カメヤマイクオ]
1949年生まれ。東京外国語大学長。ドストエフスキー関連の研究のほか、ソ連・スターリン体制下の政治と芸術の関係をめぐる多くの著作がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
102
ドストエフスキー後期の代表作。序盤が長く、苦心しましたが、途中から面白くなり引き込まれていきました。大きなストーリー展開はありませんが、奇妙な「友情」が生み出した奇怪な事件と暗い波乱の予感を感じさせます。この先、どのような騒動が起きるのか期待しますね。無神論という悪霊に取り憑かれた人々の行く末をじっくり味わいたいと思います。ドストエフスキーの思想が強く反映されていくのでしょう。2016/11/23
たかしくん
57
「いつかは、」と思っていた作品にトライです。といっても第一部はひたすら登場人物の紹介が続きます。それにしても、メールおタク、大酒のみ、変人趣味等々、どれも変わり者で何かを起こす危険をはらんでいる連中だらけですなぁ。印象に残ったのは、キリーロフの独特な人神論の下りです。「恐怖を殺すためだけに自殺する人間がただちに神になる」、私自身もそのレトリックにはまりながらも、出された結論に背筋が寒くなりました。2015/12/23
みっぴー
49
この一冊だけでは、一体何を書こうとしているのかドストの心中が全く理解出来ません。主要人物の紹介、人間関係の説明でほぼ一冊です。それでも面白く読めてしまうのは、やはりドストの凄いところ。ダメなおっさん、強気なロシア美人、皮肉っぽい若者、他者を見下すインテリ…この人達が二冊目以降、どんな風に物語を彩るのか楽しみです。2016/11/22
市太郎
47
以前新潮版を読んだ時より亀山氏の訳はあっさりという印象を受けた。その分わかりやすく、読みやすい。一巻では主人公の親世代から話が始まり、後の事件の中心となる人物達の登場・紹介がある。雑多な登場人物の関係を整理できれば読み進めることはそれほど難儀ではない(とりあえず)。前、読んだ時はあまり意識しなかったがこれは「G」という人物が語るクロニクルなのだ。当然、鍵を握る登場人物達の豊か過ぎる感情はG氏の語りの中から推察するしかない。全貌が明かされていく過程は長く、もどかしくもあるが今回は結構楽しめた。混沌の次巻へ。2013/10/31
翔亀
45
古くは埴谷雄高や高橋和巳、近くは笠井潔に深い影響を与えた作品。訳者の亀山さんは「『罪と罰』はできるだけ早い時期に読んだほうがよいが、『悪霊』はできるだけ遅くまで読まないほうがよい」とまで言っている(「偏愛記」)。カラマーゾフと罪と罰の面白さの勢いに任せて、恐る恐る読んでみたが。。。今までと、ちょっと違う。19世紀ロシアという、社会主義/近代主義/スラブ主義といった思想が跋扈したテロと革命の時代背景が濃厚に漂っている。これまで以上に複雑な人間関係にも思想の対立が裏にあるのか。上巻は背景説明のみだが不気味。2014/08/30