内容説明
「なぜかくも多様な生物がいるのか」。ダーウィンはひとつの結論にたどり着いた。すべての生物は共通の祖先を持ち、少しずつ変化しながら枝分かれをしてきたのだ。つまり、「じつに単純なものからきわめて美しく、きわめてすばらしい生物種が際限なく発展しなおも発展しつつある」のだ。
目次
第8章 雑種形成
第9章 地質学的証拠の不完全さについて
第10章 生物の地質学的変遷について
第11章 地理的分布
第12章 地理的分布承前
第13章 生物相互の類縁性、形態学、発生学、痕跡器官
第14章 要約と結論
著者等紹介
ダーウィン,チャールズ[ダーウィン,チャールズ][Darwin,Charles]
1809‐1882。イギリスの自然史学者、著述家。イングランド西部のシュルーズベリで、6人兄弟姉妹の5番目、次男として生まれる。地元のパブリックスクール卒業後、エジンバラ大学医学部に入学したが1年半で退学し、ケンブリッジ大学に転学。卒業後、英国海軍測量艦ビーグル号に乗り込み、5年をかけて世界を周航した。帰国後は在野の著名な自然史学者として研究と著作に従事する。1859年、『種の起源』を出版し、世界を震撼させた
渡辺政隆[ワタナベマサタカ]
1955年生まれ。サイエンスライター、JSTエキスパート。専門は進化生物学、科学史、サイエンスコミュニケーション(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
150
生物学や生態学に加えて地質学も著者は博識で、物的証拠の曖昧さをしっかり認識した上で絶滅種と現生種の類縁関係を図を用いて提示する。地理的分布にしろ説明は明解で、いかに不明点が多くて悩ましいのかがよくわかる。特に地質に残らない中間種や遠隔地への移動手段は苦しい難題だが、身近な検証も用いながら次々と卓見を披瀝。ダイナミックな視野と豊かな知識統合力がなせる技だ。発生学・形態学はいくらか専門性の高い内容、胚形態への洞察が鋭い。多彩なものの見方やアイデア、予見性など、その後の進化生物学研究への大きな布石となった名著。2022/03/13
ガクガク
67
時間をかけてこの偉大な著作を読了できたことに深い感慨を覚える。150年前にダーウィンが、世界を「神による創造」から「生存闘争と自然淘汰による進化」の産物に変えたこと、遺伝子もDNAの発見もなく大陸移動説やカンブリア紀の生命の大爆発も知らずに驚異的な先見の明を示したことに、改めて深い畏敬の念を禁じ得ない。この世界の生命は全て繋がっている、過去から未来へと続く壮大な系統樹の中に、ほんの一粒の存在ではあるが、確かに私も存在することに静かに感動するのだ。「人はどこから来てどこへ行くのか」に思いを馳せる偉大な書だ。2014/09/13
こなな
57
ダーウィンは生命の多様性を尊重している。アリを例えれば子孫を残さない働きアリがいる。それぞれの役割がある。存続のためには多様なパターンの形質や性質を抱えておく方が有利だということであろうということである。ダーウィンは自然淘汰説は、たとえもうこれ以上検討しなくても信じるに足る説だと思えると言い切っている。自然界にはあらゆる形質をもつ生物が多様に存在している。「強いもの」が生き残るという単純なものではないのだろう。偏見や先入観などなく、探究心、研究心で記してあることが潔いと思う。2022/01/22
molysk
47
上巻に続いて、雑種形成と中間種の化石について予想される批判への反論と、化石、地理的な分布、形態からみた分類について自説の補強を行うが、本書の主旨は上巻ですでに述べられているだろう。印象的なのは、ダーウィンの論理を着実に積み上げていく姿勢だ。当時のイギリスは、英国国教会の影響が強く、すべての生物は主が個別に創造した、とする創造説が有力だった。宗教界から予想される批判に対して、確実に反論できる理論が必要だったのだ。遺伝の仕組みは当時未解明だったが、20世紀に入ってから発展をみて、自然淘汰説との融合を果たす。2020/01/01
inami
45
◉読書 ★3 上巻を読むのに少々疲れたので(笑)、下巻の前に「恩田陸」さんの『夜のピクニック』を挟み、気を引き締めて下巻に挑戦をしたが、案の定時間がかかった。上巻では「生存闘争」や「自然淘汰」、「変異の法則」など、どこかで聞いたことのあるワードについて書かれていたが、下巻では「雑種形成」「地質学的証拠の不完全さ」、「地理的分布」などなど、上巻共々全体が長い論証となっていてなかなかどっこい難解でした。ヒトも生存闘争のもとで、構造や本能に生じた有益な差異を保存してきた結果・・今の自分があるんですね。2022/07/14