内容説明
理想の女性を追いつづける男の哀しみを描く「冬の夢」。わがままな妻が大人へと成長する「調停人」。親たちの見栄と自尊心が交錯する「子どもパーティ」。アメリカが最も輝いていた1920年代を代表する作家が、若者と、かつて若者だった大人たちを鮮やかに描きだす珠玉の自選短編集。
著者等紹介
フィッツジェラルド,F.スコット[フィッツジェラルド,F.スコット][Fitzgerald,F.Scott]
1896‐1940。ミネソタ州セントポール生まれ。プリンストン大学在学中から創作を始め、1920年『楽園のこちら側』で文壇に登場、絶賛を浴びる。妻ゼルダとの、作中人物さながらの華麗な私生活も注目を集め、一躍時代の寵児となる。1925年発表の傑作『グレート・ギャッツビー』などで“ロスト・ジェネレーション”を代表する作家として確固たる地位を築く
小川高義[オガワタカヨシ]
1956年生まれ。東京工業大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のっち♬
140
『ギャッビー』の前後に執筆された短編9つ。中でも現実を直視しない男を現実的な語り手が観察する『お坊ちゃん』の構図はそれを彷彿とさせる。『調停人』で成長を讃える一方で、『冬の夢』や『常識』では成長のほろ苦い代償がフォーカスされており、リアリストとしての著者が垣間見れる。『グレッチェンのひと眠り』然り、古い価値観と見栄に縋りついて醜態を晒す男を描く際の皮肉や滑稽味も彼ならではだろう。過ぎゆく時代に煌びやかな夢を求める若者たちの浮薄な情緒や孤独や悲しみなどを、社会と人間に対する鋭い観察の元に鮮やかに描いた一冊。2021/05/31
優希
101
タイトルの「悲しい」という意味が考えさせられる短編集でした。若者、かつて若かった者の抱える様々な想いと成長が鮮やかな色彩を見せます。だからこそ、「悲しい」という言葉が色々な表情を持つ感情になっているのかもしれません。2017/03/31
Mijas
57
「もう二度とあの時はかえらない」「あの何かが戻ってくることはない」「かつては存在したものはもはや存在していない」そんな言葉が書かれている短編集。1920年代、好景気に沸いたアメリカの回顧録のよう。東部に住むエスタブリッシュメントが描かれているのだが、彼らの心はどこか哀しい。グレート・ギャツビーと重なる「お坊ちゃん」「冬の夢」「常識」が好み。心に抱く優越感が満たされるとき、彼らの哀しみは癒されるのかもしれない。「あらゆる時間の経過に耐える鋼鉄の色を美しいと言うしかない」(冬の夢)2016/03/31
SOHSA
55
《kindle》フイッツジェラルドの代表作「グレート・ギャツビー」はもちろん素晴らしい作品だが、この「若者はみな悲しい」も作者の魅力が十二分に詰まった名作だと思う。収められた9つの短編はいずれもウイットと悲哀に富んでいて甲乙つけ難い。中でも「ラッグズ・マーティン=ジョーンズとイギ○スの皇○子」は他の作品とは趣きを異にして惹かれた。フイッツジェラルドの作品はそれほど多くはなく佳作もあればそれほどではないものもある。しかし、米国の一時代を代表する作家であることは疑いない。胸の奥がひりりと痛んだ。2019/04/04
あふもん
45
取り戻せない時間、その中でも一際繊細な時間と言いましょうか、少し気を抜いたらもう過ぎ去っていたというような瞬間や時間や時代。それに気づいた時の虚しさだったり諦めだったり、爽やかさだったり2018/12/05