内容説明
「ヘエエエイ、マクベース!」荒野で三人の魔女から呼びかけられた闘将マクベス。やがては王になるとの予言どおり、ひたすら血塗られた裏切りと栄達への道を突き進む。王の座を手中におさめたマクベスの勝利はゆるがぬはずだった、バーナムの森が動かないかぎりは…。
著者等紹介
シェイクスピア,ウィリアム[シェイクスピア,ウィリアム][Shakespeare,William]
1564‐1616。イギリスの劇作家、詩人。若くして故郷を出、ロンドンで役者となった後、座付作者として活躍。『ハムレット』『オセロウ』『リア王』『マクベス』の四大悲劇など、37編の劇を残し、エリザベス時代を代表するばかりか、時代と国境を超えて、世界文学史上最大の作家の一人に数えられている
安西徹雄[アンザイテツオ]
1933年生まれ。元上智大学名誉教授。また、「演劇集団“円”」を拠点に、シェイクスピアをはじめ、多くの芝居の翻訳・上演にたずさわった。2008年5月死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
115
実在したスコットランド王を元に、シェイクスピアが創作した有名な四大悲劇のうちのひとつ。初演は、1606年デンマーク王クリスチャン四世をハンプトン宮殿に迎えて、イングランド王ジェイムズ一世が主催した御前公演だったらしい。エリザベス一世の後、スコットランド王ジェイムズ六世がイングランド王を兼ねることになったことを鑑みると、マクベスとバンクォーの関係は、メアリー一世が処刑されてその息子が両国の王となったことを仄めかしたものとも言える。魔女の言葉を信じて一度悪事に手を染めれば、次に行う悪事のハードルが低くなる。2023/12/14
molysk
85
勇猛なる将軍マクベスは、荒野で出会った三人の魔女から、王となる予言を告げられる。夫人からの教唆にも背中を押されて、迷いを断ち切って主君ダンカンを手にかけるも、血塗られた手を見て心を乱して、安らかな眠りを永遠に失う。度重なる裏切りの果てに、王位へとたどり着いたマクベスに、先王の遺児の率いる軍勢が迫る。夫人は罪の意識に正気を失って息絶え、マクベスは一騎討ちに敗れて最期を迎える。忠実なる家臣であったマクベスが、魔女の言葉に野心を抱いて決起するも、良心の呵責に苛まれながら破滅へと向かう姿に、悲劇を感じさせる。2021/05/03
藤月はな(灯れ松明の火)
69
私は『マクベス』が好きだ。何故ならば、『マクベス』は常識では考えられないことが成就してしまったことや無意識による恐ろしさを描いているからだ。人の破滅を加速させる事象の描き方は怪奇小説的である。しかし、三人の魔女がマクベスに呼びかける時は自然に「マクベスや、マクベスや」と脳内で訳して読んでいたので、この本での「ヘエエイ、マクベス!!」という訳し方には度肝を抜かれました。もう、この言葉で三人の魔女がケミカルウォッシュ加工でスタッドや編上げ、ダメージ加工している服を着たパンクな魔女にしかイメージできない…(笑)2016/04/05
keroppi
66
【日本の夏は、やっぱり怪談】〈其の二・洋編〉いや、この古典の傑作を怪談だとかホラーだとか言うと怒られるかもしれない。でも、魔女、予言、血塗られた惨劇、亡霊、とくれば、まさにホラーに通じるじゃないかと思ってしまう。しかも、途方もない予言が現実となって押し寄せてくるラストは、エンタメの魅力にあふれている。映画化されたロマン・ポランスキー監督作品も血まみれだったし、黒澤明「蜘蛛巣城」も迫力たっぷりの狂気に満ちていたなぁと思い出した。2024/07/28
sin
52
先に読んだ喜劇2作品とは打って変わっての悲劇ではあるが解題に示唆されているように魔の者に唆されて判断を誤る所に共通点がある。一夜の夢・一時の狂乱とするならば善し、自らの人生を変えるとなればあたりまえだがそこには大きな責任が伴うと言った所か?今回はイベント【第22回 海外作品読書会(8月22&23日)シェイクスピア450年】を機に初めてのシェイクスピア作品に触れたわけだが、いつの日かその舞台を観てみたいとの思いが強くなった。最後にこのイベントに参加していただいた皆様に多謝!2014/08/24