内容説明
青年将校ヴロンスキーと激しい恋に落ちた美貌の人妻アンナ。だが、夫カレーニンに二人の関係を正直に打ち明けてしまう。一方、地主貴族リョーヴィンのプロポーズを断った公爵令嬢キティは、ヴロンスキーに裏切られたことを知り、傷心のまま保養先のドイツに向かう。
著者等紹介
トルストイ,レフ・ニコラエヴィチ[トルストイ,レフニコラエヴィチ][Толстой,Л.Н.]
1828‐1910。ロシアの小説家。19世紀を代表する作家の一人。無政府主義的な社会活動家の側面をもち、徹底した反権力的な思索と行動、反ヨーロッパ的な非暴力主義は、インドのガンジー、日本の白樺派などにも影響を及ぼしている。活動は文学・政治を超えた宗教の世界にも及び、1901年に受けたロシア正教会破門の措置は、今に至るまで取り消されていない
望月哲男[モチズキテツオ]
1951年生まれ。北海道大学教授。ロシア文化・文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
103
意外と閉じた世界で起こる不倫劇。まず、アンナの兄の不倫に対し、夫への憎悪を抱くドリーに共感。また、妻の変化に薄々と気付きながらもカレーニナ氏がアンナといる時には必ず、第三者もいる様にしたという描写に、私の親が離婚寸前にまでいった時は第三者を介さないと話す事も出来なかった時を思い出し、何処の国でも一緒なんだなと思う。望み過ぎた自尊心の為に傷ついたキティの友人となり、同時に心の師となったワーレニカは本当に素敵な大人の女性であり、惚れ惚れします。そして自然に感動する田舎貴族のリョーヴィンの瑞々しい感性が好きです2017/03/22
アン
100
有名な冒頭の一文を初めて読んだのは学生時代。その時はアンナより、若く純粋で安らぐような笑みを浮かべるキティに惹かれた気がします。第1巻では当時の貴族社会の様子が、都市と農村の生活背景の違いを通して描かれ、華やかな舞踏会などは社交界の雰囲気が伝わる一方、白樺のある猟場の情景描写が美しく印象的。美貌で優雅、息子への愛情溢れるアンナと自尊心が強いカレーニンとの夫婦関係。アンナに心奪われるヴロンスキー、凛々しく落ち着きのある優しい心の持ち主リョーヴィン。登場人物たちの心情を丁寧に読んでいきたいと思います。 2020/11/06
たかしくん。
78
望月訳で再読、兎に角、良く作り込まれた小説です!「幸せな家族は~」の有名な冒頭からアンナが登場するまでの約150ページですが、ここが抜群に面白い!オブロンスキーという、軽薄でお調子者だけど憎めないアンナのお兄ちゃんがここまでの主役となって、長い物語の導入部を、上手く運んで行きます。それだけでも読む価値あり、とは言い過ぎ?(笑) もう一つ、当時のブームの反映か、汽車が要所要所でしかも写実性豊かに登場する点が、新たな気付きですかね。勿論この後、アンナとリョービンを軸とした、2組のカップルの物語へと進みます!2017/07/14
Willie the Wildcat
77
恋愛・結婚観も時代を反映。保守vs.革新の象徴であるリョーヴィンとアンナ。恋愛も生き方も好対照。親族、社交界といった他者の思い・距離感も、絡んだ人間模様も、嵐の前の静けさという感じ。時勢を反映した駅の出会いと別れの場面も印象的。一方、運命の出会いというのは理解するも、久しぶりのセリョージャとの再会に”失望”とは・・・。愛は盲目なりを体現か。ワーレニカとの出会いが転機となり、真の愛に気づいたキティも帰国。アンナも同様の気づきを踏まえて一歩踏み込む。荒れる第二幕へ?!2016/05/25
うののささら
72
ウクライナ戦争でちょっと気になっていたトルストイ。日本はまさに明治維新。日露戦争は次の世代の話の革命前の貴族の時代。トルストイの生きた時代、ペテルブルクの上流社会はまるで平安時代のフジモン源氏物語の世界。高潔な先祖をもつ貴族の破滅的な恋愛。高級官僚夫人のアンナカレーニナと将来有望な若き武官ブロンスキーの不倫が話の中心。ロシアの不安な世相と社会心理。ひとつの家族のもめごとから貴族全体の問題へと展開していく。やっぱり文豪はすごいな。人間関係がやな予感しかしない展開。すごい小説です。2023/09/24