内容説明
森のなかの湖畔近くで暮らす漁師の養女オンディーヌ。ある日、騎士ハンスと出会い、恋に落ちる。ハンスも美しい彼女に魅かれ、ともに城での生活を始める。ただ、彼女は人間ではなく、水の精だった―。「究極の愛」を描いたジロドゥ演劇の最高傑作。
著者等紹介
ジロドゥ,ジャン[ジロドゥ,ジャン][Giraudoux,Jean]
1882‐1944。フランスの作家。エリート校の高等師範学校を卒業したが、大学教授資格試験に落弟して外務省に転じる。22歳のときに短篇小説を発表し、以後外交官として勤務しながら地味な創作活動をつづけた。45歳で最初の戯曲を手がけて大きな成功をおさめ、『オンディーヌ』を含む一連の戯曲を通して国民的作家となる
二木麻里[フタキマリ]
1960年生まれ。上智大学外国語学部フランス語学科卒。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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新地学@児童書病発動中
140
ドイツロマン派の作家フーケーの『ウンディーヌ』に基づいたジロドゥの戯曲。水の精オンディーヌの行動や言葉が、人間社会と噛み合わない所が面白い。オンディーヌの話す言葉は詩そのもので、無味乾燥の言葉が幅を利かす人間社会では浮き上がってしまうのだ。オンディーヌの行動を通して、人間社会の矛盾を浮かび上がらせる構造を持った劇でもある。オンディーヌと恋人のハンスが別れる最後の場面は、激しく胸に迫るものがあった。二人は種族を超えて愛し合えたのだろうか。2016/04/22
双海(ふたみ)
26
フーケーの『水妖記』よりも話が複雑で難解。私の好みはフーケーの方だが、こちらも作品としての完成度が頗る高い。解説が詳しくて助けられる。演劇も見てみたいな。2016/07/18
YO)))
24
原案のフーケー「水妖記」に比べると時間空間の構成が相当に複雑でムズい.奇術師(正体は妖精の王)が別の時間軸の場面を"再生"することで時系列が前後したところに,更に劇中劇の「サランボー」(byフロベール)の演出が被さってきたりするという物凄く凝った作り.しかし異種婚の悲劇,自然の倫理と人間の倫理(と罪)との葛藤,といったテーマはブレずに終始力強く語られ,クライマクスの騎士ハンスとオンディーヌの別れの場面は感動を禁じ得ない。2016/05/15
ぺったらぺたら子
21
完璧な戯曲、完全な世界。これが芸術というものなんだな。私の一番愛するヒロインはこれまでゲーテのミニヨンだったけれど、裏切ってオンディーヌを愛してしまいました、こめんなさい。アニミストである私には世界はこのような姿に見える。自然と人間との関係と、男女の関係とのアナロジーをここまで感じ取って形に出来た事に驚くが、人間中心の自然観の持ち主には違和感もあるのだろう。解説にもある通り、戯曲としての構造の美しさは非常に音楽的。何だか二人の関係が誰かに似ている、と思っていたのだが、武田泰淳と百合子さんみたいではないか!2019/07/13
りえこ
21
初めて読みました。思っていたより、とても面白くて、すらすら読めました。水の妖精とか、とてもメルヘンぽいのに、あまりそういう印象はありませんでした。違和感なく違う世界に連れていってくれました。2014/09/26