内容説明
家族の物語を虫の視点で描いた「変身」。もっともカフカ的な「掟の前で」。カフカがひと晩で書きあげ、カフカがカフカになった「判決」。そしてサルが「アカデミーで報告する」。カフカの傑作4編を、もっとも新しい“史的批判版”にもとづいた翻訳で贈る。
著者等紹介
カフカ,フランツ[カフカ,フランツ][Kafka,Franz]
1883‐1924。チェコ生まれのユダヤ系。ドイツ語で書いた。「文学以後の文学」とも称される斬新な作風で、その作品は、なにが書かれているかはクリアにわかるが、それがどういう意味なのかは、さまざまな解釈を呼ぶ。おもしろいだけでなく、奥深いアクチュアリティをいまだに更新しつづけている不思議なカフカ文学は、文学を超えて、突出した魅力と存在感をもつ。『判決』『変身』『審判』『城』などが代表作
丘沢静也[オカザワシズヤ]
1947年生まれ。首都大学東京教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おいしゃん
76
しばしば引き合いに出されることの多いこの本。ようやく読むことができた。意外に読みやすい文体。「変身」に関しては、人それぞれ解釈があるだろうが、自分は面白く、読後感も良かった。2015/02/17
優希
56
4編の作品どれも面白かったです。カフカが『判決』にてカフカという地盤を固めたのですね。変身は何度読んでも衝撃の物語ですが、だから好きなのかもしれません。カフカがカフカであるからこそ自分の好みなのですね。2023/07/01
藤月はな(灯れ松明の火)
56
「判決」の徹底した父の糾弾によって自分の偽善を曝け出されて死を選ぶ息子が悲壮すぎます。優柔不断よりも芯がしっかり、通った生き方の方が清々しいと思うけれどもそのブレなさが情け容赦なく、人の命すらも奪うということをまざまざと伝えてくれる作品。「変身」は多分、介護しなければならない家族がいる家庭の内情にも通じるのだと思うと一層のどうしようもなさが募ってきます。「掟の前で」は題名が意味深。自分が死ぬことで通ることが許される自分だけの門は世界(門の中)と自我の掟(使者)との折り合いと世界への自我の屈服だと思いました2013/03/01
サンタマリア
54
やっぱりカフカは面白いなぁ。『判決』の袋小路の中の迷路みたいな会話から突如として死に至るまでの緩急が最高。『変身』は妹がいいキャラしててめっちゃ笑った。ザムザってこんな長生きだったっけ?前読んだ時はすぐ死んだ気がする。『アカデミーで報告する』の猿はカフカ自身なのかな?家にある本でも漁って考えてみよう。『掟の前で』を読んで『審判』のKの罪とは門をくぐろうとしなかったことではないかなと思った。『失踪者』に門をくぐる描写あったかなぁ?一番好きなのは『判決』。この世で最も優れた短編の一つだと思う。2022/01/10
@nk
50
翻訳にも底本とするものに複数の選択があるようで、訳者による違いだけでないのかと、解説を読み驚く。いまこうしてカフカを読めるというそのこと自体が、複数の底本を生んだ所以なだけに、読者としては複雑な気持ちも少し。/「判決」の冒頭の穏やかさからの急転直下に魅力されつつ、やはり「変身」の突飛さ、滑稽さ、物悲しさに心打たれた。(リンゴを背に受けた描写が、まさにその極み)/この光文社の後にも、新訳が幾つか出されているようだが、映画も気になる。トリビュー版として、室町時代に「変身」を取り入れたらしき昨秋公開のやつも。 2025/01/14