内容説明
レーニンの死の直後、本書の主要部分はスターリンによる迫害の予感のなかで書かれた。「ソ連共産党とソ連全体が全体主義の悪夢に飲み込まれてしまう」直前だからこそ「等身大」に描きえた、まさに珠玉の回想録である。ロシア語原典からの初めての翻訳。
目次
レーニンと旧『イスクラ』(レーニンとの最初の出会い;プレハーノフ ほか)
一九一七年十月(十月前;革命 ほか)
人間レーニン(レーニンにおける民族的なもの―レーニン五〇歳の誕生日によせて;レーニンの負傷 ほか)
付録(マルクスとレーニン;レーニンについての本当と嘘―ゴーリキーのレーニン論についての一考察 ほか)
著者等紹介
トロツキー,レフ[トロツキー,レフ][Троцкий,Л.Д.]
1879‐1940。ロシアの革命家、第4インターナショナルの創設者。南ウクライナの自営農の家に生まれ、10代の頃より革命運動に従事。最初の逮捕と亡命後にレーニンらの『イスクラ』に寄稿。1905年革命で指導的役割を果たした。1917年革命の際にはレーニンと密接に協力して10月革命を指導。レーニンの政治的離脱後、官僚主義の克服と工業化を訴えるがスターリン派によって弾圧される。1929年に国外追放。1940年8月、スターリンの刺客にピッケルで頭を打ちぬかれて死亡
森田成也[モリタセイヤ]
1965年生まれ。大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syota
37
著名な革命家トロツキーが、レーニンの思い出を語っている。3部構成+大量の付録+長文の解説からなるが、第1部と第2部が秀逸だ。ロンドン亡命時代を描いた第1部は、亡命革命家たちの日常や議論、駆け引きなどが中心で、ノンフィクションとして十分面白い。ボルシェビキが”プロレタリア独裁”を確立した10月革命前後を描いた第2部は、世界史上稀有の大変革のさなか、二人の大革命家が何を考えどう行動したか、率直に述べられていて読み応え十分。特に、後年神格化されたレーニンの苦悩や焦燥が描かれている部分は、貴重な証言だと思う。→2021/05/25
かふ
10
解説には後の神格化されたレーニン像の以前のトロツキーが見たありのままのレーニンと書かれていたが確かに完全無欠のレーニンではないがそれでも英雄化されて描かれている。レーニンも間違うことがあるのだ。後で問題化されてトロツキーの失脚の原因となった。革命の天才レーニンの欠点を補助して参謀役で助けたのは自分だという評伝なのだが、一番問題となったのが「(資本家に)奪われたものを奪い返すのだ」と言ったとされたレーニンの言葉。2017/12/12
叛逆のくりぃむ
10
トロツキーによるレーニンの回顧録。トロツキー自身が述べているように、本書は膨大なメモワールの集積であり、纏まりを欠く。同時に透徹した視線でレーニンの姿を捉えることに成功している。2016/07/31
記憶喪失した男
8
ソ連の政治家トロツキーが書いた革命家レーニンの伝記。トロツキーの文章は情熱的で、なかなか感動的な伝記である。面白かった。2019/01/07
世話役
8
光文社古典新訳で初めて読んだのはこの本だった。本書はレーニンが病で倒れた後、スターリンとの権力闘争に敗れたトロツキーが、在りし日のレーニンやポリシェビキのこと、スターリンの台頭等に思いを馳せた追憶と思索の書である。この本から立ち上るトロツキー像は洗練された知識人だった。だからこそ、粗野なスターリンに敗れたのだろう。具体的な知恵と行動こそ政治であることを知っているものの前に、抽象的なインテリジェンスはあまりに無力である。2013/11/10