内容説明
美貌の青年ドリアンと彼に魅了される画家バジル。そしてドリアンを自分の色に染めようとする快楽主義者のヘンリー卿。卿に感化され、快楽に耽り堕落していくドリアンは、その肖像画だけが醜く変貌し、本人は美貌と若さを失うことはなかったが…。
著者等紹介
ワイルド,オスカー[ワイルド,オスカー][Wilde,Oscar]
1854‐1900。アイルランド出身の作家・劇作家。外科医で著述家の父と、作家であった母との間に次男として生まれる。自身の唱える芸術至上主義を身をもって実践し、ロンドン社交界で脚光を浴びる。29歳で結婚。『サロメ』『ウィンダミア卿夫人の扇』などの話題作を発表し時代の寵児となるが、同性愛の罪で逮捕・投獄。出獄後フランスに渡るも、3年後の1900年、パリにて客死
仁木めぐみ[ニキメグミ]
翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こーた
251
登場人物の悉くが愛おしい莫迦で、優雅な社交会を夜な夜な催し、ことば遊びはお洒落で、ときに芸術論を捏ねくり回し、みんなやたらとよく喋る。やっぱり十九世紀の小説は会話が大仰に廻りくどくて最高だなあ!とニヤニヤ読んでいたら、突然の恐怖(ホラー)に襲われて一瞬で顔が曇る。え、だって絵が。嘘だろ?理屈では説明できない。人間とは斯くも複雑な存在なのだ。誘惑、嫉妬、頽廃、堕落。内面とともに醜く変わっていく絵に恐怖し、またそれが露見することを恐れて怯える。罪は消えないのに外見の美しさを保ったままなのがまた一層おぞましい。2021/01/24
扉のこちら側
108
初読。2015年1031冊め【56/G1000】自らの美しさに気づいたことで、魔術的な魅力を手に入れたドリアン。「人が世界を手に入れても、魂を失ったら何の益がある?」何もかもが許されるとしたら、悪徳ほど甘美なものはないだろう。「僕は秘密を愛するようになった。秘密をもつことだけが、現代の生活を謎めかせ、驚異的なものにしてくれる気がする。どんなにありふれたことも、それを隠してさえいれば、ずばらしい喜びになる。」(P16)2015/08/30
藤月はな(灯れ松明の火)
105
再読。サドやボードレール、ジャン・ジュネなどは「悪徳・退廃が美」という論理を打ち立てたがそこには彼等自身の美学があった。でもドリアンの悪徳は自己中心的でいきあたりばったりなだけで、美学も何もなく、結局、ヘンリー氏の物真似人形でしかない所が彼の中身の無さを際立たせる皮肉となっている。最後に彼は改心すようとするがアランの死に責任を感じないのでは偽善でしかない。逆に無責任の塊であるヘンリー氏は嫌がっていた結婚生活だったのに才気あふれる妻が駆け落ちして寂しさを感じていたりと人間味が出て可愛らしく見えるから不思議w2015/09/17
中玉ケビン砂糖
90
、没年が1900年、ニーチェと同じ年だ(覚えやすいので、ニーチェの死=19世紀の終焉、20世紀の始まりというふうに整理している)、「オスカー・ワイルドってそんな昔の人だったのか」と年譜を見て恥ずかしながら驚く、ポートレイト見かけるたびに「またお前か」とテンプレが失笑気味に口をついて出てしまうのとは反対に、寓話しか読んだことがなかったので……2015/02/03
sin
85
登場人物の語る実のない啓蒙の言葉の数々、その場限りの思いつきを形にした口先だけの真理、若き魂はその無責任さに魅了され堕落の道を選ぶがそこには終始、自己中心的なナルシストの論理しかなくその心に他者は存在しない。故に自らの変貌を妨げているものの正体を誤り破滅を招く…さて、信仰を持たない目にはこの物語の冒涜性が見えない。ただ怪奇で耽美的な物語にしか読み取れず教訓を汲み取れない。◆英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき」必読小説1000冊を読破しよう!http://bookmeter.com/c/3348782015/11/15