内容説明
自分の頭で考える。カントが「啓蒙とは何か」で繰り返し説くのは、その困難と重要性である。「永遠平和のために」では、常備軍の廃止、国家の連合を視野に入れた、平和論を展開している。他3編を含め、いずれもアクチュアルな問題意識に貫かれた、いまこそ読まれるべき論文集。
目次
啓蒙とは何か―「啓蒙とは何か」という問いに答える
世界市民という視点からみた普遍史の理念
人類の歴史の憶測的な起源
万物の終焉
永遠平和のために―哲学的な草案
著者等紹介
カント,イマヌエル[カント,イマヌエル][Kant,Immanuel]
1724‐1804。ドイツ(東プロイセン)の哲学者。近代に最も大きな影響を与えた人物の一人。『純粋理性批評』『実践理性批判』『判断力批判』のいわゆる三批判書を発表し、批判哲学を提唱して、認識論における「コペルニクス的転回」を促した。フィヒテ、シェリング、ヘーゲルとつながるドイツ観念論の土台を築いた
中山元[ナカヤマゲン]
1949年生まれ。哲学者、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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クプクプ
74
本編、解説とも長く消化不良をおこしましたが、カントの「全てが欲しいということは何も欲しくないのと同じことである」という言葉や、少し別の表現ですが「目標」が「作戦」にかわってしまってはいけない、という表現は、私も心の中で思い当たるので改善しようと思いました。中山元さんの翻訳は素晴らしく、理解できる方は、私より楽しめる一冊だと思います。2024/09/28
コウメ
69
❷・「未成年状態から抜けだせない理由」どんな人にとっても、未成年の状態がまるで生まれつきのものであるかのようになっていて、ここから抜けだすのが、困難になっている。/未成年の状態はあまりに楽なので、自分の理性を使えない。しかも人々は、理性を使う訓練すらつけていない。そして人々をつねに未成年におくために、様々な「法規」や「決まりごと」が設けられている。/これは誤用されるために用意された仕掛け、人間が自分の足で歩くを妨げる足枷。2019/10/21
コウメ
68
「ノート」・「啓蒙の定義」啓蒙(けいもう)とは何か。それは人間が未成年から抜けること。未成年の状態とは、他人の指示を仰がなければ自分の状態の理性を使うことができないということ。人間が未成年の状態にあるのは理性がないからではなく、他人の指示を仰がないと自分の理性を使う決意も勇気も持てない。つまり啓蒙とは、「知る勇気を持て」。すなわち「自分の理性を持つ勇気をもて」ということ。2019/10/19
コウメ
60
❹・「人間制にたいする犯罪」/例えばある宗教的な組織が教会の全ての信者を絶えず監視し、信者を介してすべての国民にも絶えず監視しある宗教的な組織の教義に基づく制度を永続的なものにできるか?/しかし私(カント)は不可能であると考える。人間が啓蒙されることを永久に妨げることを目的とした契約が締結されても、それは無理である。たとえ最高の権力によって契約されても同じ。2019/10/27
コウメ
58
❸・「理性の公的な利用と私的な利用」公衆を啓蒙するには、自由があればすればよい。自由のうちでもっとも無害な自由。《あらゆる場所で議論するなと叫ぶ声を耳にする》将校は「議論するな訓練を受けよ」と叫ぶ。税務局の役人は「議論するな納税せよ」と叫ぶ。牧師は「議論するな信ぜよ」と叫ぶ。好きなだけ、好きなことについて議論せよただし服従せよと語っているのはこの世でただ1人の君主「フリードリヒ大王」だ。/2019/10/25