内容説明
彫刻家・遠野公彦は、モデルのリンダをひと目見た瞬間に「ひらめき」を感じた。彼女の可憐かつ扇情的な振る舞いは、四十二歳の独身芸術家に創作意欲だけではなく、別の感情までをも沸き立たせてしまった。ヌードを拒むリンダを脱がせるため、遠野の悪戦苦闘が始まる―(「充血性海綿体」)。情けなくも愛すべき男たちの「悲哀」をユーモアたっぷりに描いた異色の七編。
著者等紹介
黒川博行[クロカワヒロユキ]
1949年愛媛県生れ。京都市立芸術大学美術学部彫刻科卒業後、高校で美術の教鞭をとる。’86年『キャッツアイころがった』でサントリーミステリー大賞を受賞。’96年『カウント・プラン』で第49回日本推理作家協会賞(短編部門)受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
utinopoti27
92
黒川さんの作品では、疫病神シリーズもいいですが、魑魅魍魎渦巻く画壇や骨董の世界で、騙し騙される人たちの描写がたまらなく好きです。胡散臭い雰囲気を醸し出すコテコテの大阪弁もまた良し。本作は、実にしょ~もない男たちが登場し、安っぽいオネエチャンやら儲け話に振り回されるお話。大それたことには手を出す勇気はないねんけど、あわよくば濡れ手に粟の一攫千金を狙いたい。そんな小者ぶりが透けて見えるチープさがめっちゃええねん。第1話は「充血性海綿体」。どないです、このネーミングセンス!黒川センセ、やっぱサイコーやわ!2017/11/20
Shinji Hyodo
84
七編の短編集。黒川さんの短編集は初めて読んだのですが面白い。いずれも女性に甘く、振り回されて本懐を遂げられぬままに…それでもメゲないダメンズのお話。周りを見渡してそこら中にありそうな、振り返って見て自分にもあったような…男は皆んな愛すべきお馬鹿だなぁ〜って七つのお話です(@_@)2017/11/01
ミーコ
49
黒川さんの作品3冊め。こんな内容とは知らずに借りました。なんともバカバカしく、力が抜ける作品。情けなさを通り越して 笑えてくる様なストーリー。だけど軽く読めるし 挫折もなく終わりました(^^; 「尾けた女」は面白かったです。2014/11/03
Walhalla
40
全7話の短編集でした。どれも、ちょっとだらしのない男の人が主人公ですが、その馬鹿さ加減が憎めませんね。良い格好をしたり儲けたりしようとしても、浅知恵は一向に実らず、どんどんダメになっていく様子が面白いですね。『ユーザー車検の受け方教えます』のお話しが特に良かったです。 あと、作中の会話のなかで、さりげなく黒川博行さん自身の作品がいくつか紹介されていましたが、実はどれも直木賞候補にもなった作品ですよね。芸が細かくて面白いですね。2021/12/07
mr.lupin
36
黒川博行さんの著書26冊目を読了。七編からなる短編集であったが、黒川さんのユーモアたっぷりのこんな作風もあるんだなと、ちょっと意外な一面を見たような作品だった。何だかどうしょうもなく情けない、それでいて憎めないおじさん達の話を、楽しむ事ができたかな。秀逸だったのは、「尾けた女」と「ユーザー車検の受け方教えます」。 ⭐⭐⭐★★2023/11/26