内容説明
中学校の国語の時間。「走れメロス」の音読テープに耳をふさいだ森見少年は、その後、くっついたり離れたりを繰り返しながらも、太宰の世界に惹かれていった―。読者を楽しませることをなによりも大切に考えた太宰治の作品群から、「ヘンテコであること」「愉快であること」に主眼を置いて選んだ十九篇。「生誕百年」に贈る、最高にステキで面白い、太宰治の「傑作」選。
著者等紹介
森見登美彦[モリミトミヒコ]
1979年、奈良県生まれ。京都大学農学部大学院修士課程修了。2003年、『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、作家デビュー。’07年、『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を受賞。同作品は、本屋大賞2位にも選ばれる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chiru
93
森見さんが選ぶ『“愉快”な太宰治作品集』。”ダークサイド”を看板にしてるような作家だけど『卑屈な自分を笑う』というユーモアをもつ、ひねくれ者で愛嬌たっぷりの太宰治に出会える作品集。いちばん好きな『畜犬談』は、出だしから傑作。「犬にいては自信がある。いつの日か必ず喰いつかれる自信が…」犬嫌いが、噛まれ対策のため犬に媚を売り、結果、犬になつかれて困ってしまうというアンビバレンスが可笑しい。森見さんの独特の視点で語る解説も、サービス精神満載でした! ★42019/06/08
sk4
84
本文に「井伏さん(井伏鱒二先生)の作品を編む」という表現がありましたが、モリミーにとっては大好きな太宰を編むというのはさぞかし楽しかったことでしょう。 短い作品ばかりなので、年末の時間がない時でも一作一作楽しく読み終えられました。 特に私は、内面を吐露するモノローグものが好きだなあ。 『佐渡』とか『犬畜談』とかヤバい面白かった。 「私は、うんざりした。あの大陸が佐渡なのだ。大きすぎる。北海道とそんなに違わんじゃないかと思った。台湾とはどうかしら、等と真面目に考えた」・・・阿呆過ぎる。確かに愛しい。2014/01/02
ユカ
66
森見登美彦氏が選んだ太宰集という時点で、読み出す前から愉快である。果たして大変愉快でした。太宰はいろいろなことを気にしすぎ(笑)。20代も多くの作品を読んだし過去に読んだ作品もあったのだけど、そのときは気づかなかったおもしろさにあふれていました。森見氏推薦だから気づけたんだろうな。『カチカチ山』から『佐渡』あたりまでは吹き出しながら一気に読みました。『畜犬談』は最たるもの。『走れメロス』を最後にもってくるところが憎い。編集後記は森見氏が作品からどのような印象を受けたのかがわかって素敵。2014/09/19
かおりんご
60
太宰の面白い作品だけを、モリミーの視点で集めた本。一瞬モリミーが書いたのでは?と思うような馬鹿さ加減に、思わず笑ってしまいました。太宰の暗めの作品も好きですが、これは心から純粋に楽しめて、ますます太宰好きになること間違いなし!中でも、「カチカチ山」と「女の決闘」がおすすめです。今まで太宰の陰鬱な感じが好きではなかった人に、是非読んでもらいたい一冊です。2015/01/11
nico🐬波待ち中
58
森見さんチョイスの太宰治作品。とにかくヘンテコで愉快なもの、というモリミー基準で選ばれた作品集。選んだそれぞれの作品について森見さんが解説していて、森見さん独自の解釈がこれまた面白い。中でも「カチカチ山」「貨幣」「蓄犬談」「粋人」が面白かった。擬人化ものの作品なんて、森見さんが作った物語のような錯覚をしてしまう。森見さんが太宰の影響を少なからず受けていたなんてちょっと驚きである。太宰がこんなに愉快で愛嬌のある、リズミカルな物語を描いていたとは…!太宰の意外な一面と魅力が紹介された傑作選。2016/08/24