内容説明
恋人に別れを告げるために訪れた海辺の宿で起こった奇跡を描いた表題作「月下の恋人」。ぼろアパートの隣の部屋に住む、間抜けだけど生真面目でちょっと憎めない駄目ヤクザの物語「風蕭蕭」。夏休みに友人と入ったお化け屋敷のアルバイトで経験した怪奇譚「適当なアルバイト」…。珠玉の十一篇を収録。
著者等紹介
浅田次郎[アサダジロウ]
1951年東京生まれ。’95年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、’97年『鉄道員』で直木賞を受賞。2000年には『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HIRO1970
116
⭐️⭐️⭐️⭐️本年10冊目。浅田さんは通算42冊目。短編が11もあるお得な1冊でした。何となくいつもよりも古臭い表現が多い様な感じがしていましたが、後書きでご本人も注釈を入れている通り、季節感や季語を効かせた書き方を特に重視したとの事で、腑に落ちました。2020/02/22
じいじ
105
11篇どれも個性があって、味わい深い短篇集である。表題作は、若い二人の恋は、結局は熱く燃えた青春の1頁だった、ということなのだろうか。最後の1行が印象に残る。「しかしこうも齢を食うと、月下の恋人を今さら羨まぬでもないのだが」。私の一押しは【忘れじの宿】である。52歳の主人公とマッサージ師の女が、旅先で偶然出会う。それぞれに過去の思い出が垣間見える、大人の会話がとても面白い。このマッサージ師は、体のケアだけではなく、心のシコリも解きほぐしてくれるのがいい。2020/02/13
優愛
102
「忘れじの宿」「あなたに会いたい」そして表題作の「月下の恋人」が好き。短編だと甘く見たのはとんでもない間違いでした。読み終えた瞬間に霞んでいく物語は、相応しい季節にふと帰ってくる。春、夏、秋、冬。その他の季節にも名前を与えてくれるような少し冷たい、優しさを秘めた著者の思いを感じました。淋しさや切なさは消えずに心の中にある。そして何年かの月日を経て温かみを帯びてその人の中に再び収まるのです。月光の下寄り添う恋人たちは青みを帯びた光に照らされ別世界にいる様。そしてタイトルの美しさに惹かれて読んだのもまた事実。2015/02/01
takaichiro
97
二日連続の浅田さん、今日は11編の短編集^_^浅田さん自身が巻末で書いてある様に主役は季節、その中に不器用な人々が行き交い、偶に優しい光を羽織る魂(幽霊)が、ぼぉっと顔を出したりする^_^昭和の時代、田舎のおばあちゃん家で親戚の子供たちが集まり、近くのお寺さんに行って火の玉が見えたとか、そんなもの錯覚だとか蚊帳に入って言い合った時の様な懐かしさがここそこに現れる^_^川端靖也も文字で季節を描く達人だったが、浅田さんは絵柄に寒暖の感触を加えたりする^_^ハズレのない作品群、今後もお世話になります^_^ 2019/05/30
Atsushi
79
最近、今更ながら浅田次郎の短編集にハマっている。わずか数十ページに広がる浅田ワールド。優しい気持ちになったり、不覚の涙を流したり、どんどん引き込まれてしまう。本作では、「黒い森」のように物語の続きは自分で考えてみてねといった作品もチラホラ。もう少しお付き合いしてみよう。2017/12/10