内容説明
もう君は一人じゃない―。児童養護施設で成長し、自殺未遂を繰り返す十八歳の李理香の許に見知らぬ男性から突然届いた一通の手紙。自らも同じ境遇だと明かす手紙の主・基次郎が綴る素直な文面に、李理香も次第に心を開くようになる。しかし、二人には意外な運命が待っていた。テレビドラマでも話題になった、往復書簡が織り成す純粋な「愛」の物語。
著者等紹介
辻仁成[ツジヒトナリ]
東京生まれ。’89年、小説『ピアニシモ』ですばる文学賞を受賞し、本格的に執筆活動をはじめる。以後、作家・詩人・映画監督・音楽家などさまざまな分野で表現し続けている。’97年、『海峡の光』で芥川賞、’99年『白仏』の仏翻訳語版『Le Bouddha blanc』で、仏フェミナ賞・外国小説賞を日本人として唯一受賞。現在は拠点をフランスに置き、創作活動を続けている。自ら所属するバンドZAMZA N’BANSHEEのファーストアルバム『MANGA』も2009年5月に発売(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちーたん
53
★★★☆☆読友さんのレビューに惹かれ購入した作品。児童養護施設で育つ18歳の《李理香》。自殺未遂を繰り返す彼女のもとに見知らぬ男性《基次郎》なる人物から一通の手紙が届き、2人の赤裸々な文通が始まる。不満や不幸ばかりを綴る《李理香》とそっと今という時間の大切さを諭す《基次郎》。書簡形式でおりなされる構成があまり得意でないため、《李理香》をどうしても好きになれなかった…でも《基次郎》の手紙の言葉からいくつも感銘を受け、終盤にかけてわかる真実が切なく、基次郎の言葉や思いが胸に染みた。2019/04/08
sakap1173
47
施設で育った李理香が、施設の先生に紹介された基次郎と文通するお話。李理香は愛に飢えているがゆえに、不器用な生き方しかできず、そして傷ついていく。そんな李理香を基次郎は手紙という形で少しづつ再生にいざなっていく。ラストは限りなく切ないストーリーだが、基次郎の愛の深さを際立たせる。そんな温かいお話しでした。辻さんらしいですね。2022/04/07
coco
28
何度も何度もこの本を開いては閉じてしまった。涙が止まらなくて。どうして今までこの作品に気付かずにいられたのか。「お互い誰にも言えない真実を語る」「絶対お互い会わない」というルールのもと文通を始めた李理香と基次郎。手紙というやり取りだけで進められる物語だけれど、それ故に1つ1つの言葉が胸に突き刺さる。李理香の叫びが。基次郎の祈りが。基次郎の言葉がどれも素敵で、李理香へのメッセージなのに私まで励まされたような気持ち。本当に良い作品でした。おすすめです。2019/01/09
団塊シニア
23
男女二人の手紙のやりとりから始まる物語の展開、最後の悲しい結末には感動した、作者の筆力が一気に読ませる魅力があり、人間愛を描いた素晴らしい作品である。2018/10/15
マッピー
18
相性が悪いのか、今まで読んだ作品のどれ一つも素晴らしいとは思えない作家が、この辻仁成だ。なにかこう気取ったような文体。不自然な設定から生まれる不自然な人間関係。言動に説得力のない登場人物たち。何よりも、主人公たちの不誠実さが嫌いです。でもこの作品は、設定こそ不自然だけど、李理香も基次郎も互いには誠実で、そこがいままでとは違ったな。でも、今後彼の作品は、もう読まなくてもいいなあ。私には合わな過ぎるので。2024/04/13
-
- 電子書籍
- めくるめく(3) 月刊コミックアヴァルス