内容説明
本書五間堀にある古道具屋・鳳来堂。借金をこさえ店を潰しそうになった音松と、将来を誓った手代に捨てられたお鈴の二人が、縁あって所帯をもち、立て直した古道具屋だった。ある日、橋から身を投げようとした男を音松が拾ってきた。親方に盾突いて、男は店を飛び出してきたようなのだが…(表題作)。江戸に息づく人情を巧みな筆致で描く、時代連作集。
著者等紹介
宇江佐真理[ウエザマリ]
北海道函館市生まれ。1995年、「幻の声」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に、『深川恋物語』で吉川英治文学新人賞、’01年には『余寒の雪』で中山義秀文学賞を受賞。人情味あふれる時代小説の書き手として人気を博す(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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時代小説大好き本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あすなろ
129
鳳来堂というがらくた同然の品物で溢れかえった古道具屋がある。そこを拠点に、人情味溢れる複数の物語が展開される。正直、特段、これという派手さはない作品集である。しかし、その平凡な様が良いのだと故宇江佐氏は語っているのではないか。例えば時節柄もあるが、主人公の妻が平凡な正月を迎えられたことに倖せを感じる箇所がそれだと思う。心休まる連作短編集。故宇江佐氏の作品は2作目。また別の作品も追い追い読もう。2015/11/19
佐々陽太朗(K.Tsubota)
125
人は思い定めればいつでも真人間になれる。まして良い出会いがあればなおさらだ。自分だけならついつい楽に流れそうになるが、真心のあるつれあいを持てばそうもいかない。年の暮れに好い話を読みました。真心を持って真っ当に暮らしていれば幸せに巡り会える。全ての短編がそう思える逸話でした。そろそろ落語『芝浜』を聴く頃合いです。「来年も邪なことは考えず真っ当に生きる」と思い定めるとしましょうか。それはそうと、宇江佐さんの体調が気になります。その後、お加減はいかがですか?2014/12/06
優希
111
面白かったです。古道具屋とお惣菜と人情の絡むあたたかさに味わい深さを感じました。色々な事件が起きつつも、皆で心を合わせて解決していくのも江戸ならではですよね。穏やかな時間が全体を通じて流れているようでした。2017/03/04
文庫フリーク@灯れ松明の火
106
続編『夜鳴きめし屋』読むために再読。元旦は地区の新年会の最中、中学以来の悪友からメール。神奈川から帰省している由。帰宅後家電にかければ幼い声。悪友の家で初めて逢った一人娘は、「パパ、ママ」連呼する幼子だった。不妊治療に10年かけて得た子を遺し、奥さんは天に召された。人生を半ばを過ぎても、互いに綽名で呼び合い、仲間の名前も当たり前のように綽名が飛び交う。私が「スィート・テン・ダイアモンド」と冷やかした幼子は、今や中学生だという。古道具屋・蓬莱堂の音松・お鈴夫婦。「ひょうたん」や「そぼろ助広」のような和む→2015/01/01
chimako
96
音松とお鈴。響きの良い夫婦である。息子の長吉はしっかり者。音松の幼なじみも音松の兄たちもそれぞれに心配しあう。支え合って暮らしていた江戸の市井の人々は生き生きと良く動く。そこにはただの「めでたしめでたし」はい。が、清々しい空気が漂う。泣いたり、笑ったり。表題作「ひょうたん」の根付けに仕込まれた無病息災の願い。鹿の角で作られた瓢箪の中に小さな瓢箪が6つ。下駄が一足。賽子が1つ。こんな細工が出来でも一人前と認めない親方の厳しさと弟子を精進。職人は手先だけではいけない。凛と張りつめた仕事場が目に浮かぶ。2015/11/09
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