内容説明
強盗殺人事件を追う刑事は、容疑者が立ち寄ると睨んで、男のかつての恋人を張込む。吝嗇の銀行員と結婚した女は不幸な日々を送っていたが、そこへ容疑者から連絡が入る。二人を追う刑事が見たものは―。清張推理の出発点となった「張込み」、そして「菊枕」「断碑」「石の骨」ほか、人間心理の綾、社会の矛盾を描いた感動の八編を収録。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909年北九州市生まれ。給仕、印刷工などの職業を経て、朝日新聞西部本社に入社。懸賞小説に応募入選した「西郷札」が直木賞候補となり、’53年に「或る『小倉日記』伝」で、芥川賞を受賞。’58年に刊行された『点と線』は、推理小説界に「社会派」の新風を呼び、空前の松本清張ブームを招来した。ミステリーから、歴史時代小説、そして、古代史、近現代史の論考など、その旺盛な執筆活動は多岐にわたり、生涯を第一線の作家として送った。’92年に死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ソーダポップ
38
松本清張は、ミステリー(探偵小説)作家だと思われるが、それは後の話。作家活動開始当初は、デビュー作「西郷札」など歴史小説が多かったが、この全集3くらいからミステリー要素が強くなる。この人の話の作り方は実に独特だ。謎解きがあるわけでもなく、探偵も出てこない。平凡に見える事件の経過を語っていくうちに、実は全く別の事件であることが判明する、というパターンが多くやはり清張はミステリー作家だと言える。切れ味の鋭い皮肉な幕切れまで、小説としての完成度を高めている全集でどこかノスタルジックな感慨を感じた。2022/05/05
KAZOO
23
この中ではやはり何度か読んだこともあるのですが副題となっている「張込み」と「菊枕」が読みでがあります。そのほかも同じようなタイプの小説が多いのですが、このころは清張もまだ頭角を現しつつあったころで、生活も厳しく自分の体験などを重ね合わせて書かれていたものが多いと感じました。2014/09/12
とろとろ
20
短編全集3冊目。これは自身が編纂したもののようであるから、物語の並び順にも意味があるのであろう。だが、とても暗い情念に振り回されるような話が並んでいた。意図的に私小説的な話を集めたものではないかと感じた。2015/07/11
ラムネ
12
スルメのように噛めば噛むほど、味が出る短編集。 時々ガリっと苦かったり、思いのほか甘みがあったり、激辛だったり。 不遇の時をじっと堪えて、浮かび上がる時を待つ物語が多い。 人生の辛いところは、不遇の者は不遇のままどころか、 どんどん悪くなっていくことだ。 好事魔多しに対して、魔には好事はやってこない。 ひとつ踏み外したら終わりの中、 ささやかな幸せを求め生きてるんだなあ。2018/03/01
ランラン
9
著者の推理小説も面白いが武士の世の時代背景に転嫁する話も面白い。歴史に対する造詣が深いからこそだと思う。2020/10/10