内容説明
犬山家の三姉妹、長女の麻子は結婚七年目。DVをめぐり複雑な夫婦関係にある。次女・治子は、仕事にも恋にも意志を貫く外資系企業のキャリア。余計な幻想を抱かない三女の育子は、友情と肉体が他者との接点。三人三様問題を抱えているものの、ともに育った家での時間と記憶は、彼女たちをのびやかにする―不穏な現実の底に湧きでるすこやかさの泉。
著者等紹介
江國香織[エクニカオリ]
1964年東京生まれ。’89年「409ラドクリフ」でフェミナ賞、’92年『きらきらひかる』で紫式部文学賞を受賞。2002年には『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞を、’04年には『号泣する準備はできていた』で直木賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
464
江國香織さんによる現代版『細雪』(Inuyama Sisters)。もっとも、こちらは3姉妹の物語だが。3人のそれぞれに個性的な女性たちの中で、誰を一番魅力的だと思うかは読者個々の意見の分かれるところだろう。私はと言えば、まず夫の邦一のDVを許容してしまう長女の麻子は論外。また、三女の育子はあまりにも子供っぽいので、これもパス。消去法というわけではないが、やはり次女の信子にもっとも魅かれるものを感じる。が、もちろん彼女とてベストというわけではないのだが。不甲斐ないとはいえ、熊木の矜持もわかるだけに。 2018/08/08
おしゃべりメガネ
159
そんなにたくさんの江國さんの作品を読んでいるワケではありませんが、この作品の登場人物がとても魅力的で好きな作品です。自分は男なので、全部が全部共感できて読めているワケではありませんが、3姉妹を中心に夫、恋人などかかわる人々の心理描写を見事に描いていて、ミステリーではないのに先(展開)が気になり、アッという間に読了してしまいます。限定するつもりはありませんが、女性姉妹の方、女性姉妹が奥さんの旦那様、ぜひ一度読んでみては面白いかと思います。納得できる部分や意外な発見など、自分を少し?成長させてくれます。2011/09/04
優希
104
のびやかで駆け抜ける作品という印象です。3姉妹の強くしなやかな物語。3人それぞれ問題を抱えているけれど、共にいた時間と記憶が彼女たちを強くしているのだと思います。DV夫と複雑な結婚生活を送る麻子、仕事と恋に強い意志を持つキャリアの治子、友情と肉体でしか繋がれない育子。彼女たちの倫理観はそれぞれズレていて、残酷なものを感じました。受け入れがたい部分もあるけれど、彼女たちの生命力や意志の強さに引き込まれました。彼女たちは「想いわずらうことなく愉しく生きて」いるのです。2015/12/06
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
102
犬山家三姉妹の話。次女治子は仕事も恋も意思の強さを感じさせて、女性として魅力に溢れている。三女育子も独特の理念を持っていて、なかなか理解の及ばない感じも素敵。 長女の麻子はDVに遭っていて、DV夫の邦一があまりにも卑劣で、暴力を振るう時の表情がいやらしくてこちらまで不快な気分に。麻子の思考もなんだか正常な感じじゃなくて、早く逃げて!ってぞわぞわしてしまう。 江國さんの描くDVの情景や洗脳された妻の思考回路があまりにリアルすぎて私には辛すぎました。 個人的に治子の清冽な感じが好き。2018/04/24
ユザキ部長
96
困惑し孤独になる。外の普通の世界は、自分が考えてたほど普通でも快適でもないのかも知れない。長女は自分に正直になれない。孤独こそ本当の恐怖と錯覚し、本能では怯えてるだけ。理屈じゃなくごく自然に家族を想う姉妹達がまさに思い煩う事なく生きる。タイトルが気になり手にとった本。まぁまぁ面白かった。2017/03/17