内容説明
衆人監視の白木の箱の中から突如消えた“人形の首”。直後、殺人現場には、無惨な首なし死体と、消えたはずの人形の首が転がっていた。殺人を予告する残酷な人形劇。それは犯人からの挑戦状か!?神津恭介がアリバイトリックに挑む。著者の校正用初版本の加筆修正を採った決定版。同時期に書かれた短編「罪なき罪人」「蛇の環」を収録。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
305
★★★★☆ 高木彬光の最高傑作。 犯人が挙げられた瞬間は多くの人が衝撃を受けたのではないだろうか。 とはいえ個人的には第一の挑戦状の時点で犯人及び共犯者の想像は付いた。しかし神津が誤った方向に行くのでかなり戸惑わされた。 ぶっちゃけあれだけ「人形はなぜ殺された」と言われたらその理由に気付くと思う。そうすると犯人が分かり、そこから逆算して一つ目の殺人事件の真相も分かる仕組みである。 まぁ犯人が見抜けるかどうかにかかわらず面白いミステリであることは間違いないしオススメの一冊。2021/01/11
ちょろこ
145
古き良き探偵小説の一冊。読んでいる間ずっと頭の中に、なぜ?がぐるぐるまわり続けた。盗まれた人形の首。なんてことはなさそうなこの奇妙な事件が複雑怪奇な事件のほんのプロローグだったとは…。なぜこんな回りくどいことを?当たり前だけど終わってみれば一つ一つの事件は全て無駄なく意味のあるものだったのだなと感嘆の思いが溢れる。一見、無駄とも思えるあの長い列車の時間さえも。詩人が残したメモでさえも。初めて文字で味わった神津恭介。こんな人なんだね〜。昭和初期の時代と怪奇、陰鬱な雰囲気を堪能した古き良き探偵小説。2021/06/19
徒花
135
まあまあ。悪くないけどオススメするほどではないかも。オリジナルは1955年に刊行されている本格ミステリーで、巻末から著者が読者に語りかける古式ゆかしいスタイル。そして終盤に「読者への挑戦状」が入る。タイトルの通り、殺人事件が起こる前になぜか人形が破壊されるルーティンがあり、それがメインの事件のカギになっている。怪奇的な雰囲気は嫌いじゃないが、探偵役の神津恭介が意外と人間くさいというか平々凡々としてた。トリックはわからなかったけど、犯人はなんとなく予想がつく。ほかに短編も収録されている2021/02/14
へくとぱすかる
135
角川文庫版以来、久々の再読。全くストーリーを忘れていて、初読同様に読めてよかった。連続殺人中、作者のメインは第二の事件であるらしい。1955年作品なので、時代背景を補いながら読む必要もあるが、社会風俗の描写よりも、新憲法の下にある、という考えに基づく発言が、ひんぱんに出てくることに注目。登場人物はすべて戦前の社会を知り、影響された世代であることの重みも感じる。神津恭介は天才探偵のはずだが、さすがにこの事件には手こずっている。松下研三も、引き立て役ながらいいコンビだ。併録の2短編も非常にトリッキーで良い。2020/12/08
セウテス
83
神津恭介シリーズ第8弾。〔再読〕名探偵、怪奇的演出、不可能に思われるトリック、ディクスン・カーを後継する本格ミステリ代表作の一つだと思う。タイトルがそのまま、読者への挑戦になっている処など感激もののニクい演出だ。数々のヒントに要所に置かれた伏線、本作はきちんと謎が解ける本物の推理小説だ。しかしあの天才神津恭介にしては、切れ味が悪すぎる。神津より先に犯人に気づく者がいる、という演出は避けるべきでは無かったのか。人形を使い不気味な雰囲気を作り出し、渾身のトリックにアリバイと、お手本の様な作品だけに不満が残る。2016/11/20