内容説明
東大医学部のうす暗い標本室に並ぶ、刺青をした胴体。不気味な色彩で浮かび上がる妖術師「大蛇丸」。この一枚の人皮から、恐ろしい惨劇が始まった。密室殺人と妖しく耽美な世界に神津恭介が挑む、戦後本格推理小説の礎となった処女長編。デビューにいたるまでを綴ったエッセイや、最近発見された初期の未発表短編「闇に開く窓」を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みっぴー
39
殺人を陰画と陽画に例えたのは凄い…コペルニクス的発想ですね。長かったですが、楽しめました。風呂場に胴体の無いバラバラ死体。しかも密室とくれば読まない理由はありません。動機がありきたりだったのが残念でしたが、消えた胴体のトリックが本当に見事でした。刺青文化を軸にした妖しげな雰囲気が物語全体に漂っているのも良かったです。なんかこう紫のオーラがムンムンと…後書きに、この本が出版されるまでのドラマが記載されており、そちらもまた面白かったです。2016/01/25
K
24
密室、アリバイくずしの本格的なミステリーだが、それ以上に刺青の話が印象的。退廃的で猟奇的で雰囲気のある話でした。2016/02/13
山ちょ13
24
「刺青殺人事件/高木彬光」読了。高木さんの文章がすごく肌に合う!概要を聞いて、覚え書きを見ただけでおおよそ解決してしまうなんて、神津恭介ちょっと天才過ぎやしないか?密室そのものの解決には然程驚かなかったけど心理的密室にはちょっとやられたかな。「人形は〜」に出てきたヒントに少し似ていて「入ったから出られた」ていう言葉が当てはまりそう。刺青の持つ、芸術的な美しさを強調したいのは分かる。刺青をした女性の肌が持つ甘美で妖艶なのも分かる!でも、僕は普通の肌の女性がいいかな(笑)刺青した皮膚の標本があるのには驚いた。2014/05/27
たち
23
探偵の神津恭介が容疑者と碁を打ったり、将棋を指したり、ヴァン・ダインの「カナリア~」を彷彿させるシーンがありましたが、ファイロ・ヴァンスに負けず劣らず、かっこよかったです。ちょっと怖いですが、刺青の標本を見てみたくなりました。2016/08/15
Small World
22
日本3大探偵のひとりではありますが、明智サンや金田一サンに比べて影が薄くなってきている神津恭介の登場作で、高木彬光サンのデビュー作を読了です。戦後の薄暗い町で起きる猟奇的殺人事件!この雰囲気だけでも読む価値ありです。トリックに見当がつきやすいのは、決して色あせてるわけではなく、その後に生まれた作品の中で繰り返し使われているからだと思います。すでに絶版となっている作品も多いので、生き残っている有名作を読んでいこうと思っています。2020/04/24