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光文社文庫
神聖喜劇〈第5巻〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 510p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784334734060
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

“被疑者”冬木二等兵の「不条理上申」と東堂太郎の「意見具申」とは奏功、奇怪な“事件”は終熄する。醜怪極まりない「模擬死刑事件」による、東堂・冬木らの営倉入りを経て、事態は、教育期間の最後を飾る大珍事によって急転回する。その主人公こそ、大前田軍曹その人だった―。そして、一九四二年四月二十四日午前九時五十五分、東堂は屯営に訣別したのであった。

著者等紹介

大西巨人[オオニシキョジン]
1919(大正8)年福岡市に生まれる。九大法学部中退。新聞社勤務を経て、召集により対馬要塞重砲兵聯隊に入隊。45年に復員後は福岡市で『文化展望』を編集。47年『近代文学』同人。52年上京して「新日本文学」常任中央委員となる。72年同会を退会。戦争・政治・差別問題を中心に執筆活動を行っている
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

踊る猫

38
読み終えた、という気がしない。むしろ東堂太郎をめぐる物語はここから始まる、という印象さえ受ける。そう、『神聖喜劇』は終わらない小説(あるいは始まってすらいない小説)なのだ。私たちの社会もまた東堂が属する軍隊に似ており――あるいは日本という国それ自体も?――そこを生きる東堂の姿とは私たちの姿でもあるのだろう。カフカにおけるKのようなユーモアで軍隊を生き抜く東堂の姿に、ドリフにおける志村けんのそれにも似た不敵な佇まいを感じ、私もまたニヤリと笑ってしまった。読み終えるのが惜しい一冊。『カラマーゾフの兄弟』的な?2019/07/21

フリウリ

30
鞘すり替え事件、模擬死刑+重営倉事件、「練兵休」中外出+往復ビンタ事件の後、最後はアレ(阿部氏による2巻解説参照^^;)。3巻解説で保坂氏が、一番印象に残るのは村上少尉と述べていたが、人非人であってもあまりに人間的でもある日本農民下士官、と東堂が呼ぶ大前田とともに、厄介な人間と思う。5巻を読みながら偶々映画「ゆきゆきて、進軍」を見たが、理不尽な暴力を是認する軍隊を統率していた大元帥が一切責任を取らぬことを、元兵士は厳しく指弾していた。喜劇的にしか語れぬことの、なんと多いことか。たいへんいいもんを読んだ。92026/08/12

松本直哉

25
嗜虐的悪ふざけの極みの模擬死刑の直後だけになおさら、青い目の輝く冬木の「天に向けて撃つ」ひとことが光り輝く。全5巻のクライマックスはここだった。それは撃つこと、殺すことの拒絶、すなわち兵士であることの拒絶、窮極の叛乱。たった一人の叛乱の無力なごまめの歯ぎしりは当然厳しい罰が下るが、だから無意味ということにはならない。部落出身ゆえの陰湿な差別にさらされても精神の自由を最後まで失わない冬木と彼を守ろうと奔走してきた東堂の、別れ別れになる前の敬意と感謝にみちた会話が忘れがたい。2019/10/07

みつ

24
いよいよ最終巻。「異変」の犯人探しの場面では、語り手を離れ、時間の順序をばらばらにしたうえでシナリオ風に構成され、劇的かつ歪んだ空間を形成する。その中に挿入された、幼少期の冬木が醤油の代金を支払うため、水を入れた四斗樽に小銭を入れることを強いられる場面(「新平民」の触れたものは不浄ということか?)の残酷さ。この後「摸擬死刑」の場面では、軍隊の愚劣さと対して声を上げる一・二等兵たちを描いて、大きなクライマックスに達する。最後の場面では班長大前田がとんでもない行動に出て、東堂の陰画としての存在を明らかにする。2021/05/03

無識者

21
社会的不平等に歯向かう事、それは有意義なことだと信じたい。「生産様式が変わらん以上、抑圧がなくならない、不平等を是正するなら生産様式を変える努力をせよ」みたいなことをいい、東堂のような抵抗を批判的に見る人に会った事がある。私個人は現実の不平等は実際に差別された人が不平を訴え、それにより社会の認識が変わり、実定法が作られ是正されるように思う。2016/05/09

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