出版社内容情報
長年ひきこもっていた19歳の諒太と44歳の大知。双方の家族が縋ったのは、新宿にある自立支援センター。
強引に自宅から引き出された二人は、ほかの三人とともに、元警察官が営む熊本の研修施設で囚人のような生活を強いられる。
施設長は巨体の大女だ。悪魔のような彼女に監視され、辛い日々が続く中、監獄のような扱いに抗い五人は施設長を殺めてしまう。
必死にもがき、社会に怯えるように生きてきた彼らの終わりが始まる――。
【目次】
内容説明
あの日を境に、生まれ変わったんだ。孤独、恐怖、絶望。家から強引に引き出された男女五人。炸裂する自我、秘密を共有した者たちの乱。ひとりじゃなかった。『正体』『悪い夏』で大ブレイク!今を抉る胸熱のエンタメ長編!!
著者等紹介
染井為人[ソメイタメヒト]
1983年千葉県生まれ。芸能マネージャー、舞台演劇・ミュージカルプロデューサーを経て、2017年「悪い夏」で第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞して作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
171
引きこもりを抱える家族の苦悩は深いだろうが、救いを求める気持ちに付け込んで金をむしり取るブラック支援業者は亡者の衣服をはぎ取る奪衣婆か。そんな業者に強制収容所で奴隷扱いされてきた男女5人が反乱を起こし、弱者を食い物にする連中に戦いを挑むドラマだが正直カタルシスに乏しい。人生を投げていた彼らの愚かさが、周囲にどれだけ迷惑をかけていたか最後まで理解していない。業者の関係者を殺したり監禁する場面でも、痛い目に遭った経験がないから引きこもり続けた実態を映している。2つの悪が自分たちがマシだと言い争っているようだ。2025/09/16
いつでも母さん
144
「枠にはめようとする存在があるから。」あぁ、思い当たることはある。紙一重でならなかっただけ・・染井さんの新作はひきこもりを題材に、強引に引き出された男女5人と、引き出したブラック支援団体の攻防を、エンタメ感満載で一気に読んだ。面白かったと言えば語弊があるかもしれないが、母親の気持ちも苦しいほど伝わって切なかった。映像化の予感有り(笑)あれから10年後のエピローグが染井さんっぽいと感じた(当方比)2025/09/18
タイ子
90
ここに数年間ひきこもっている2人の男がいる。ある日、突然彼らの元に数人の人間たちがやってきて強引に家から連れ出される。もちろん、家族は承知の上だから拉致ではない。自立支援センターなる会社が請け負った脱ひきこもり作戦は全部で5人の男女がいた。ここで始まる地獄の生活。ハラスメントなんて関係ない、暴力と暴言による支配力。拷問のような毎日がある日突然終わり、新しい生活が始まる。この展開があるから面白い。地獄を見た者は普通の生活さえ天国。秘密を共有して生まれる信頼感は頼りなくも心強い。何だ、読後のこの爽やか感は。2025/10/09
チーママ
85
ひきこもりとブラック支援を絡めた重めの題材だったが、テンポのよい展開で暗くなり過ぎないのが良かった。引き出し屋の話といえば、ひきこもりの子のために法外な契約金を払わねばならず家を手放しホームレスになった母親の話を読んだことがあるが、それとは一線を画す作品。引き出し屋により強制的に寮に連れてこられたひきこもりの5人は、ある出来事から団結して難局に立ち向かうことになったが…。ひきこもりの息子を思う母の懊悩が切なく、どんな結末になるのか心配だったが、想像を超える力強い着地にホロリ。思わず胸をなでおろした。2025/09/30
ゆみねこ
77
家から強制的に引き出され、熊本の施設に連れて来られた男女5人。ボランティアと言う名目で養鶏場で働かされ暴力で支配する施設長の未知瑠。ある日施設長を殺害してしまうが、彼らの本当の自立はそこから始まった。不登校から7年間引きこもった僚太、ブラック企業で心を病み20年間引きこもった大知を軸にしたストーリー。社会問題になっている引きこもり、もうけしか考えていない悪徳業者。エピローグが面白い!2025/09/26