出版社内容情報
田園地帯の小さな町にある栗谷交番。ある事情で刑事課から異動になった巡査部長・浦貴衣子は、ここで新米巡査・澤田里志とペアを組んでいる。ある日、居宅訪問した別荘地の保養所で、二人は東南アジア系男性の他殺体を発見。被害者は近所の通称アジアンアパートに住む技能実習生だった。犯人を追う中、不審な動きを見せる里志に貴衣子は疑念を抱くが――。元女性白バイ隊員の著者ならではの繊細な眼差しが光る交番ミステリー!
内容説明
ある事情で刑事課から交番勤務となった巡査部長・浦貴衣子は、新米巡査・澤田里志とペアを組んでいる。ある日、居宅訪問した別荘地の保養所で、二人は東南アジア系男性の他殺体を発見。被害者は近所の通称アジアンアパートに住む技能実習生だった。犯人を追う中、不審な動きを見せる里志に貴衣子は疑惑を抱くが―。小さな町を舞台に描く、交番ミステリー!
著者等紹介
松嶋智左[マツシマチサ]
1961年生まれ。元警察官、日本初の女性白バイ隊員。退職後、小説を書き始め、2005年に北日本文学賞、’06年に織田作之助賞を受賞。’17年、『虚の聖域 梓凪子の調査報告書』(応募時タイトル「魔手」)で島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ノンケ女医長
41
主人公は2人。43歳の女性巡査部長と、拝命したばかりの男性巡査。2人とも、それぞれに複雑な人生を歩んだからなのか、警察組織から「厄介者」の扱いを受ける行動に至りやすい。形ばかりのハラスメント相談窓口を訪れた浦巡査部長が、自分の意見を主張したのちの所属で出会った、今回の事件と相勤者。事件の展開に、やや唐突さは感じられるけど、無我夢中で犯人を追いかける警察官魂が感じられて、とても良かった。交番がどういう場所であるべきか、新人に諭す文章が最後にある。とても感動できる表現だし、表紙イラストの美しさに、何度も唸る。2025/03/23
nemuro
41
略歴に「元警察官、日本初の女性白バイ隊員。退職後、小説を書き始め、2005年、松嶋ちえ名義で応募した『あははの辻』が第39回北日本文学賞を受賞」などとあった。既読本は『女副署長』(2021年11月読了)に始まり、同じく<女副署長>シリーズの「緊急配備」「祭礼」を含め『流警』(本年6月読了)までの6冊。さて本書。どうやら『貌のない貌 ~梓凪子の調査報告書』(2019年)に続く警察小説の2作目。今回も、序盤に幅広く布石を打っておいて動き始めたら同時多発的に最後まで。そんな<フロスト警部>的な展開で、悪くない。2024/08/30
のんちゃん
32
交番勤務の巡査部長.浦貴衣子は、新米巡査で感情の浅薄な澤田里志とペアを組み教育している。浦は以前、刑事課所属。ある事情により自ら移動した過去がある。浦と澤田がある情報により居宅訪問した保養所でアジア系男性の他殺体を発見。捜査が進むと浦は里志が事件となんら関係しているのではと疑惑を抱く。日本初の女性白バイ隊員の経歴をもつ作者、やはり警察内部の描写やその人間関係の語りはリアル。が、それだけでなく伏線の張り方、青年の成長譚の盛り込み方、警察官の心意気等もしっかり語られている物語構成に感心した。ミステリの良作。2024/06/27
むつこ
30
とある事情から交番勤務についた41歳の女性警官が主人公。ちょっと田舎町の温かみのおまわりさん事件簿だと思ったら、今時の外国人労働者や若手警官の扱いなど多様性?に苦労する中堅たちの毎日がつづられていた。あー、私もその一人で「え!今ってそこまで気を使うの?」と、社会の変化についていけなかった。専業主婦ってこれだから社会生活に疎いの?とショックだった。ラストがよかった、我が町は派出所だけどこれからはおまわりさんに声がけあいさつをしたいなと思った。2024/06/08
seba
23
「ハコ」とは交番を指す隠語の一つ。新米巡査の澤田とペアを組むことになった、元刑事課所属の巡査部長・浦貴衣子。澤田は真面目ではあるが、他人に対して深く関わりたがらない側面があり、今時の若者感に周囲もやや手を余し気味。物語としては、ある事件がまた別の事件を招き、それぞれの真相が少しずつ連鎖的に明らかになっていく展開。特に終盤にかけて中程度の山場が何連も訪れるため、最後まで目を離せない手堅い一冊だという印象だった。因みに私はサブタイトル(文庫化に伴って付けられたもの)を見て、勝手に短編集だと勘違いしてしまった。2024/07/04