出版社内容情報
名探偵・南美樹風と縁が深かった篤志家の女性が亡くなった。長く闘病生活を送っていた彼女だが、その死に他殺の疑いが浮上する――。実業家一族を覆う呪われた宿命とは? エラリー・クイーンの国名シリーズにオマージュを捧げる圧巻の本格推理!
内容説明
カメラマン南美希風と法医学者エリザベス・キッドリッジは、篤志家、安堂朱海の弔問に訪れていた。だが、彼女の死は自殺か他殺の疑いを招き、未解決のままの朱海の孫娘殺害事件の謎をも呼び寄せる。不意に現れる脅迫状。青白く光るタイプライターの文字。ギリシア意匠の棺の周りで起こる不可解な出来事の数々は、いかなる真相を語るのか。柄刀版“国名シリーズ”第二弾!
著者等紹介
柄刀一[ツカトウハジメ]
1959年、北海道生まれ。公募アンソロジー『本格推理』シリーズ(光文社文庫)への参加を経て、’98年『3000年の密室』で長編デビュー。ロマンティシズム溢れるテーマを揺るぎない論理で展開する知的な作風で、多くの熱狂的な支持を集めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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geshi
31
謎にキャッチ―さが無く文章が所々引っかかるが、マイナス面を払拭するロジックは本格推理の芸術品。祖母の死は自殺か他殺か?4年前の事件の犯人は?脅迫状はどうやって置かれたのか?という謎の引きが弱く、一族内で互いに疑いを抱き一触即発の緊張感を持ちながらじわじわ進むストーリーはなかなか読み進めにくかった。しかしそれらを乗り越えた先で展開されるロジックの楼閣は美しく堅牢。犯人の操りの可能性を排除し、本物の手掛かりを元に築かれる推理にただただ酔いしれ、思いもよらぬ真相へと導かれる本格推理でしか味わえない愉悦。2024/03/07
ち~
25
国名シリーズ②老女の病死に葬儀の直前に浮上した疑惑。それは自殺か?殺人か?四年前の事件の関連は?全過程がかなり閉塞的な状況で進行する地味な展開だが、細やかに提示されてきた謎や違和感を美希風により論理的に解かれるラストに引き込まれた。美希風の生真面目な推理はやっぱり良い。2024/02/24
おうつき
18
柄刀作品、やっぱり読みづらい。展開がやや地味な上に情報量が多いので読み進めるのにかなり時間がかかってしまった。だけど、それを差し引いても終盤の畳み掛けるようなロジックには舌を巻いた。特殊な慣習を守っている安藤家の間柄だからこそ成立する真相が順を追って明かされていく流れは本当にワクワクさせられる。2024/12/05
やっす
6
実に柄刀さんらしい、重厚な長編ミステリだった。クイーンの国名シリーズを下敷きにした、柄刀版国名シリーズの唯一の長編、そしてかの大傑作を冠した作品ともなればその期待値は跳ね上がるというもの。結論から言えば、本家の傑作度には及ばなかったというのが正直な印象。手掛かりの信憑性をロジックで詰めていくところとかは実に見事なんだけど、その果てに導かれた真相が、個人的にあまり好きになれないタイプのものだったのがその理由。推理の過程が物凄く良いだけに、非常に惜しいと思ってしまう作品。2024/11/09