出版社内容情報
1939年、上海。激化する日中の対立関係。それでも戦争を回避すべく、日中和平工作にすべてをかけた人々がいた――。
語学教師の倉地スミは、極秘裡の日中和平工作に通訳として参加していた。いったんは頓挫する和平の道だが、今井武夫陸軍大佐のもと、新たな交渉〈桐工作〉に乗り出してゆく。
内容説明
1939年、上海。語学教師の倉地スミは、極秘裡の日中和平工作に通訳として参加していた。いったんは頓挫する和平の道だが、今井武夫陸軍大佐のもと、新たな交渉“桐工作”に乗り出してゆく。日中双方の謀略が渦巻く中、スミと仲間たちは想像を絶する困難なミッションに挑むのだが―。歴史の巨大なうねりに命をかけ立ち向かう人々の姿に、心震える傑作長編。
著者等紹介
上田早夕里[ウエダサユリ]
兵庫県出身。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。’10年に発表した『華竜の宮』が、「SFが読みたい!2011年版」にてベストSF国内篇第1位に輝き、第32回日本SF大賞を受賞した。他のSF作品に『夢みる葦笛』(「SFが読みたい!2017年版」ベストSF国内篇第1位)などがある。SF以外のジャンルに『破滅の王』(第159回直木賞候補)『上海灯蛾』(第12回日本歴史時代作家協会賞「作品賞」受賞)などの作品がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Y.yamabuki
23
満州事変後の日中和平工作を扱った作品。史実の中に架空の人物と事柄を組入れているので、何処までが史実で、誰が架空の人物か調べながらの読書だった。オリジナルの登場人物達は皆魅力的で、彼らの活躍場面はハラハラドキドキの展開で面白かった。個人的にはもう少し彼らの活躍場面があるか、或は日本と中国に挟まれた彼ら個人々の苦悩や葛藤等人間性を描いても良かったと思う。それでも何度も和平交渉がなされ、戦争回避を願った人々がいたことを知ることができたのは良かった。今の世界情勢を思わせるものでもあった。 2024/04/01
ハッピーハートの樹
5
お互いが平和を願っているのなら、和平交渉なんて簡単に進められそうなのに。ややこしいんですね。/通訳って、良く考えると超重要ですね。単語一つとばすだけで、ニュアンスは大きく変わっちゃう。ある意味外交官本人よりも大事なんじゃないか。その分野の専門知識も本人以上じゃないと、ちゃんと伝えられない。/映画やニュースの字幕でも、注意して聞いていると明らかには端折ってることもよくあるから、海外の人の言葉を正しく理解するには、その母国語の理解が必須ですね。翻訳機だって100%は信じられません。英語の勉強、もっと頑張ろう。2024/04/12
てぃと
4
タイトル&表紙買いした小説。 満州事変後の日中和平交渉に奔走する人々を描いた作品でしたが、史実・実在の人物とフィクションが違和感なく結びついていて、リアルなストーリーになっていたな~と感じました。 また、国際色豊かな当時の上海租界の雰囲気も伝わってきて、物語の舞台に思いを馳せました。 それにしても和平交渉の難しさは想像以上。 ヘーゼルの花言葉「和解と平和」が叶わなかったことが本当に残念。2024/06/15
Fumoh
4
ファンタジー作家・上田さんの歴史物語で、太平洋戦争直前の満州事変のころを描いています。実在した人物を軸にして日中和平工作を描いていますが、ちょっと作者の肩に力が入りすぎかなー……という気がします。もともと上田さんって設定をガチガチに作る人っていうイメージがあって、今回も時代設定やキャラクター設定、人物関係、舞台設定などをガチガチに(やりすぎっていうくらい)作っています。だから文体からも、ものすごく圧力を感じるというか、正直かなり読みにくさを感じました。資料もきちんと読み込んで、リアルな世界を作っている2024/06/08
ほにょこ
3
★★★☆☆ 中国と日本の和平を目指す人々の話。和平交渉ではなく和平工作と言っている辺り、その難しさを表していますね。説明的な文章が多いのと視点が分散されているのとで、いまいち臨場感がなかったけれど、どきどきしてひきこまれるシーンもありました。2024/07/24