内容説明
「あの海軍甲事件で山本五十六長官が撃墜された時、私は1番機、2番機に続く『3番機』の搭乗員として、長官と同じ空を飛んでいたんです」1943年(昭和18年)4月18日。日本海軍連合艦隊司令長官の山本五十六海軍大将が、日米の最前線となっていたソロモン諸島で、最前線を視察するためラバウルからブインへ移動中、搭乗していた機体をアメリカ軍の戦闘機に撃墜された。五十六が座乗した1番機は11名全員が、宇垣纏参謀長が搭乗した2番機は12名中9名が戦死している。通説では、海軍甲事件において登場する陸上攻撃機はこの2機だけである。果たしてこの話は真実なのだろうか。すると証言者の青木藏男さんは一冊の手帳を取り出してきた。
目次
第1章 山本五十六、ラバウルへ
第2章 白装束の偶像
第3章 僕もショートランドへは行きたいからね
第4章 宇垣の入院
第5章 巡視計画の真意
第6章 過ぎゆく日々
第7章 野豚狩り
第8章 出発前夜
第9章 機上の人
第10章 悲劇と混乱
第11章 喪失
著者等紹介
池田遼太[イケダリョウタ]
1998年生まれ。専修大学文学部歴史学科日本近現代史専攻卒。日本陸海軍の研究、特に情報戦・暗号戦を専門とし、戦争体験者やその遺族への聞き取り取材も行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
71
山本五十六の最期の訪問予定地に慰労物資を運んだ輸送機搭乗員からの聞き書きと、様々な史料から構成されたラバウルでの山本や軍の動きを、それこそドラマ仕立てに構成した書。著者はまだ25歳と若いが、祖父以上に年の離れた搭乗員への取材から、この物語を構成した手腕は今後が期待できる。山本の動き自体は他書で知っていることが多かったが、豚狩りとかは記憶になかった。しかし視察内容を暗号とは言え詳細に電報しており、参謀の中には解読の懸念を示すものがあったようだが、そのまま実施してしまう愚。危機管理の甘さには愕然とする。2023/05/13
kawa
29
山本五十六大将の墜死事情を、ラバウルでの直前15日の滞在の様子を通して分析。3番機と言っていいのかの疑問を含めて突っ込みどころありで、学問的には?との思いなのだが、ドラマ風に読みやすく仕立て上げた作者に歴史ファンとしては好感、拍手。事件後の動向に、もうちょっと触れていただけるとさらに良かったかな。2024/08/20
筑紫の國造
13
タイトルからして、なんとも惹かれるものがある。本書は、山本五十六と同じ空を飛んだ3番機、青木藏男氏のインタビューをまじえながら、連合艦隊司令長官山本五十六の最後の日々を活写する。特徴として、まず非常に読みやすい。青木氏は山本と直接関係があったわけではないが、若い飛行隊員の人生を追体験するような形で当時の状況が描かれている。著者はまだ大変若く、これからの活躍も期待される。もはや戦争経験者が非常に少なくなった現在、新たな時代の歴史ノンフィクションの担い手の一人として、しっかりとした意識を持っている。2023/05/13
oooともろー
8
2023年新書読み納め。山本五十六謎の撃墜事件の詳細。これまであまり知られていなかった3番機。生死は本当に紙一重。ただ、あとがきで五十六の死と安倍晋三の死を並べて論じていたのだけが残念。若い著者が間違った方向へ進まないことを切に願う。2023/12/29
onepei
3
読みやすかった。好みの問題だが全部ドラマ仕立てにしなくても気がする。2023/06/11