内容説明
数量化のセンス、比較のセンス、因果のセンス、確率のセンス、分析のセンス―計量社会学者が示す―現代社会に欠かせない「数字との付き合い方」。数量的な研究では「正解/不正解」「完全/不完全」という明確な線引きは存在しない。
目次
第1章 数量化のセンス
第2章 比較のセンス
第3章 因果のセンス
第4章 確率のセンス
第5章 分析のセンス
第6章 数量化のセンス再訪
著者等紹介
筒井淳也[ツツイジュンヤ]
1970年福岡県生まれ。一橋大学社会学部卒業。同大学大学院社会学研究科博士後期課程満期退学。博士(社会学)。現在、立命館大学産業社会学部教授。専門は家族社会学・計量社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえぽん
50
計量社会学者が、データや分析の「ある程度妥当」と「いい加減」を見分けるために必要な数量化、比較、因果、確率、分析に係る「センス」を紹介した書。職業や民族など分類自体が難しい場合の数量化の複雑さ、比較のために条件を揃えると有意味な比較が困難になる「比較のパラドックス」、原因以外を徹底的に同じにすると原因と考えられるものが限定される「処置のジレンマ」、コイントスなど自然発生的偶然には偏りを含みやすいこと、要約・予測・因果の分析手法の違いを認識すべきであることなど、ビッグデータ時代に一般人にも必須の知識が満載。2024/08/09
ほし
16
予想よりも難度が高い内容が含まれており、読むことに苦労したものの、良い学びになりました。統計において扱われる数字は、そもそもどのような性質を持っているのか。ちゃんと前提を揃えて比較しようとすればするほど、データが特殊なものになりすぎて使えなくなるというパラドックスや、未知の要因による分析への影響を減らすための無作為化比較実験、分析方針における要約と予測、因果の違いなど、興味深く読みました。そもそも統計調査によって何かが分かるはどういうことなのか、その仕組みを知りたい方にお勧めの一冊です。2023/03/03
おっとー
8
エビデンスやら目標を数値化しろやらで客観性の権化とみなされがちな数字と統計。しかし本書は統計に生じうる偶然やバイアスの様々な例を示し、それをいかに平坦にするかなどの手法が示される。結局は数字の裏には様々な意味があり、そしてその数字は変化しうる曖昧なものなのだけど、かといって人間は数字や統計なしには生きることができない。数字の扱い方を幅広く網羅した入門書。2024/07/13
はぎはぎ
7
データを集めたり生かしたりするのに、統計学をどう用いるべきなのかという観点から書かれた本。初級よりも難しい概念も扱われるが、数式はほぼ用いられていないので、文章で意味を追うことができる。数値化されたものは何でも信じるのも、取ってきたデータが完全に正確であることはあり得ないとして数字を全く信用しないのも、どちらも不適切な態度であり、制約がある中でいかに数字を利用するのかが重要であるというのがメッセージ。つまり、制約を理解しつつデータから何がわかるのかをいかにくみ取るのかというのがここで言う「センス」である。2023/03/31
ぷほは
7
kindle版。ここ数年、筒井先生の著作が参考書リストに入ってないことがない。統計学の考え方一般の解説というよりも、より現場レベルでの調査における計量研究の活かし方が平易な文体と最新の論文参照などを駆使して語られていく。超絶苦手な分野なのでここまでクリアに書かれても苦労しながら通読したが、最後に「個体」をめぐる話、ヴェーバーの「ゲホイゼ」(殻、枠)についての話が出てきたのが個人的にアツかった。かつての「鉄の檻」を作り出した数字の流れが、今はPCとAIに力を借りながら偶然を当てはめることを可能にしてくれる。2023/02/17
-
- 和書
- 十字架の聖ヨハネ詩集