出版社内容情報
佐藤優[サトウ マサル]
内容説明
トランプの勝利は、労働者階級の勝利か?世界を覆う格差・貧困。新自由主義=資本主義が生み出す必然に、どう対峙するか?キリスト教神学的アプローチで、廣松渉『エンゲルス論』を読み直す。
目次
同志社大学神学部時代の廣松渉との出会い
カルバン主義者としての青年エンゲルス
シュライエルマッハー神学がエンゲルスに与えた意味
神の疎外
神の収縮と悪の起源
救済の根拠としての民族への受肉
資本家としてのエンゲルス
神的人間の発見
共産主義へ
マルクスの疎外論との対決
弁証法の唯物論的転倒
フォイエルバッハの超克
著者等紹介
佐藤優[サトウマサル]
1960年東京都生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在英国日本国大使館、在ロシア連邦日本国大使館に勤務した後、本省国際情報局分析第一課において、主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で東京地検特捜部に逮捕され、’05年に執行猶予付き有罪判決を受ける。’09年に最高裁で有罪が確定し、外務省を失職。現在は、執筆活動に取り組む。’05年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮文庫)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。’06年に『自壊する帝国』(新潮文庫)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Tomoichi
21
私は革命を語りながら、大学で教授をし、資本主義・自由民主主義の社会を満喫し、社会的名誉を得ている人間を信用しない。だから革マルの黒田寛一の方が筋が通っていると思う。本書の主役の東大教授である廣松渉うは一番嫌いなタイプである。この人のエンゲルス解釈を佐藤優のキリスト教神学で読み解くっていう本書は、頭脳を徹底的に無駄使いした人の話です(笑)マルクスもエンゲルスもブルジョアだから所詮彼らの考える革命は、空想でしかなく、キリスト教の鬼っ子としての共産主義マルクス教でしかない。2025/05/11
ラウリスタ~
14
哲学科卒ではない一般のビジネスパーソン向け、って序盤で書いていたけど、生まれた時には既にベルリンの壁が崩壊していた世代にはそもそも知らない述語ばかりで参った。廣松っていう人が東大という体制の側から革命家としてどのようにエンゲルスを「誤読」していったのかという過程を、著者自身のマルクス主義者にしてキリスト教徒というバックグラウンドから、「主観的に」批判するという入り組んだ構造になっている、と思う。なわけで、そもそもヘーゲル、フォイエルバッハ、エンゲルスあたりについて基本的なこと知っていないと途中で挫ける。2017/07/09
Z
8
ギャップを重視した。シェリングはカバラーの思想、神の自己収斂を取り入れた。これが難しいが、世界が完全に神の設計図通りに作られているのではなく、人間の自由意思に余地を残し全知全能の支配に空白を残すというのがこの理論を取り入れた場合の帰結となる。例えば悪の存在は神が作ったのではなく神の力が及ばない空白で人間の自由意思の悪用により生じるものとなる。というよりそのようなイデア(神)と実在(世界)の解離こそ悪の存在理由である。他方フォイエルバッハは神学的な思考をまったく認めず、神は人間の空想物とした。今までの流れで2019/01/17
Z
8
では、エンゲルスがマルクスとは独立に疎外論から離れていった思考過程を追う。マルクスの理論はヘーゲル哲学の転倒ということが言われる。エンゲルスがその地点に経ったのはヘーゲルを批判した後期シェリングやフォイエルバッハを通してである。ヘーゲルの言葉には現実的なものは理性的であり理性的なものは現実的であるというものがある。歴史を絶対精神の支配する過程とするヘーゲルにとって、理性=イデアと現実的なもの=実在は時間的なギャップをはらみつつも最終的な統一が予感される。後期シェリングはイデア(観念、理想)と現実(実在)の2019/01/17
kenitirokikuti
7
KindleunLimitedにて。再読。初出は第三期「情況」2008.1・2号~09年6月号に連載した「今こそ廣松渉を読み直す」である。05年に佐藤に一審判決&『国家の罠』出版。この連載中の08年9月にリーマンショック。そして連載を終えたすぐあと09年7月に衆議院解散、第45回総選挙で民主党政権が発足。といった背景▲まぁ、そういう地上の話とは別に、〈著者のような絶対観念論者〉〈神は観念によってのみとらえられる〉という佐藤の言葉で彼の信仰が理解できた。やっぱ彼はプロテスタントだが、私はそうではない2022/06/16