内容説明
なぜ、方言はうらやましがられたり、馬鹿にされたりするのか。『となりのトトロ』のサツキとカンタの会話から、何が分かるのか。あの人はなぜ自分のことを「オレ」と言ったり「ぼく」と言ったりするのか。ママと呼んでいたのがかあさん、おふくろ、母親、と変化するのはなぜか。状況に合った敬語が使えるようになるにはどうしたらよいのか…。学校では教わらない、でも、一番「伝わる」日本語とは…?「生きた言葉」と、環境(社会)との関係を科学する―「ことばの社会学」の入門書。
目次
第1章 社会言語学とは何か
第2章 地域に根ざした言葉
第3章 話し手に根ざした言葉
第4章 聞き手に合った言葉
第5章 状況に合った言葉
第6章 伝達方法に合った言葉
第7章 日本語の人称表現
第8章 言葉と言語
第9章 言葉と文化
第10章 言葉の変化
第11章 言葉と政治
著者等紹介
石黒圭[イシグロケイ]
1969年大阪府生まれ。神奈川県出身。一橋大学国際教育センター・言語社会研究科准教授。一橋大学社会学部卒業。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専門は文章論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ally
20
言語としての日本語に興味が出てきたので手に取った本。母語であるが故に普段は意識しないことも、客観的に見ると不思議なことだらけ。1章ごとにまず学生からの質問があり、それに関連する分析が進む。各章の最後にまとめが添えられている+文章も平易なため、専門的な内容もわかりやすくぐんぐん読める構成になっている。「流暢である」とはつまり、文法や語彙を自在に操るだけでなく「ふさわしさ」をも使いこなせることなんだなと実感。「方言コスプレ」とか「きもち欠乏症」とか、日本語の研究に可愛い名前が多いのもなんか日本ぽくてイイ。2022/12/07
ラウリスタ~
13
タイトルで損しているかもな。社会言語学(理論言語学に対立)とは何かを日本語を例に説明。丁寧さには二つのベクトル(共感、親愛を示したい・相手との距離を取りたい)。従来の敬語論では、「相手を高める」という役割ばかりで、距離を見逃していた。日本語での二人称は失礼になりうる、なぜなら日本語における無標の人称は「省略」だから。目上の人、親しくない人、に「あなた」というと、一対一の近い関係を強要してしまう。同様に一人称を、いかに消極的に選択するかが問題となる。英語の早期教育、イマージョンとサブマージョン(危険)。2019/11/18
水生クレイモア
11
「正確さ」の理論言語学に対する「相応しさ」の社会言語学。入門書として分かりやすく、小説を書く上で参考になる。2021/10/12
HALI_HALI
7
日常生活において実践している言語コミュニケーションを如何にしてより良く、適切に行うか。その研究を行っているのが社会言語学。タイトルの通り入門書として非常に簡潔に分かりやすく概要が纏められている。各章の最後には纏めが箇条書きされており斜め読みでも大凡の意味は摑み取れる。最後の方にあったバイリンガルの話が最も興味深かった。日本ではバイリンガル=2言語を不自由なく操る人、とイメージする。一方で世界的にはどちらかの言語が不十分であったり、2言語とも中途半端である人も多い。言語はやはり難しい。2018/01/07
ニョンブーチョッパー
6
★★★★☆ 例文に古臭さを感じるという、この手の本にありがちなことはなくて、若者言葉の例文も新しい感じがするし、『トトロ』や『めぞん一刻』のシチュエーション例もあって好印象。一人称としての「こっち」や、女性が一人称として「自分」を使うことが最近増えてきているということは知らなかったので、世代差を感じた。2019/11/20