内容説明
「昭和の名人」の時代から現在の“落語ブーム”までの歴史を追い、落語の本質と評論の役割を考察する。特別付録「落語家」「この一席」私的ランキング2010。
目次
1章 落語とは何か(「落語とは何か」を考える必要は無い;落語は文学ではない;演目は「素材」に過ぎない;「古典」という言葉の中に込められた美意識;新作落語は邪道ではない;「古典を守る」という欺瞞;落語ブーム前夜;パラダイム・シフト;現在の落語界)
2章 落語評論家とは何者か(落語評論は何のためにあるか;「落語通」とは何者か;「アンチ談志」がもたらした弊害;「アンチ談志」から「アンチ立川流」;落語評論家に「芸談」は語れない;上手い芸とは何か)
著者等紹介
広瀬和生[ヒロセカズオ]
1960年生まれ。東京大学工学部卒。ハードロック/ヘヴィメタル月刊音楽誌「BURRN!」編集長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
流之助
39
未だ寄席に行ったことがなくテレビや動画や音源にて少しだけ落語に触れている初心者の自分でもわかりやすく読めた。落語のネタを紹介する本を読んであらすじを知ったような気になっていたけれど、本書でそれは「落語のようなもの」だとバッサリ。やはりライブで演者が語る落語を感じてみたいと強く思わせてくれた。巻末のオススメ落語家さんについても非常に参考になった。2019/01/02
うえぴー
16
『この落語家を聴け!』という著作で、噺家本位の評論を書く人なんだなあ、という親近感を持ちました。本書は、落語初心者向けではなく、落語界を取り巻く状況と、それを論ずる評論家のあり方を問う作品。立川流に目をそむけ、内輪にばかり目を向けている「自称評論家」に対し、鋭い切っ先を喉元に突きつける。落語に対する「無償の愛」を持ち、常に目線は観客に向けるのが評論家のあるべき姿であると。そして、落語は噺家の個性によって面白くなるのだから、良い噺家を選んで観れば落語界も活気を取り戻すだろう、という希望の光を見せてくれた。2017/10/19
ウィック&ぺディ
4
★★★半☆2018/09/23
imagine
3
落語に興味を持ち始めてすぐに気がついたことは、普及している情報のほとんどが、流儀や系図、用語解説などを主にした、形式的、懐古主義的なものだということ。この書では、なぜそのような事態になったのかについて、広瀬氏が想いをぶつけている。とはいえ文章は感情論に走らず非常にロジカル。巻末には私的ランキングもついていて、今、どの噺家を観るべきかが一目瞭然。2017/09/10
cdttdc
3
落語の「評論」というマイナーな娯楽の中でも更にニッチなジャンルについての一冊。立川流についての言及がかなり多いが、事実だから仕方ない。音楽誌の編集長らしく、他の娯楽との相対的な比較などが分かりやすい。落語に興味のある人にはお薦め。なんでもそうだが、実力のある人はお客さんが集まるのだ。最後の小さん冶師匠の件のサゲが清々しい。2012/07/18