内容説明
マハーバーラタは、全十八巻、十万詩節、二十万行を超える世界最大の叙事詩である。マハーバーラタ自ら“ここにあるもの総ては何処にもあり、ここに無いものは何処にも無い”と豪語している。本書を日本で初めて訳した著者が、そのユニークで含蓄に富んだ挿話から厳選した“インドの一夜の夢物語”。
著者等紹介
山際素男[ヤマギワモトオ]
1929年三重県生まれ。法政大学日本文学科卒業。’98年、古代インドの大叙事詩『マハーバーラタ』の翻訳で第34回日本翻訳出版文化賞を受賞
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感想・レビュー
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Sakie
17
正月に観るインド映画の基礎知識として。しかし「マハーバーラタ」は長すぎて、しかもパンダヴァvs.カウラヴァの物語以外にも、今昔物語や禅問答めいた小話が多々収められているようだ。本書はそれをピックアップしたもの。登場人物は神、聖仙、王、賢者と堂々たる面子だが、性欲をつい我慢でけんかった話が多くて笑った。生命力旺盛である。デヴァとアスラの戦いも面白い。バラモンが編纂したものなので多分にヒンズー寄りと思いきや、アスラがドラヴィダ、デヴァがアーリアなのにデヴァが侵略したことを認めていて、これもまた大らかである。2025/01/13
れなち
8
世界史の授業で一瞬名前を覚えた『マハーバーラタ』からいくつかの話を紹介したもの。私は原書を読んだことがないので、どこまでが翻訳でどこまでが著者のアレンジなのかわからなかったけれど、それぞれのエピソードに寓意があって、昔話集という感じで楽しめた。人と神が自然と共存する古代インド世界。神々は壮大で破壊的なパワーとスケールを持ちながらも、どこか素朴で大らかで人間味がある。そして王様も神様も、男も女も、とにかく性に奔放(笑)。女の欲望に対する男たちの恐れとか、母性に対する憧れとか、そんな印象が強かった。2021/08/04
よみ
5
某ソシャゲのインド兄弟が尊すぎて、気が付いたら買ってしまっていた一冊。アルジュナは出てきたけど、カルナは出てきませんでした。神話だからって頭ではわかってるんですが、インドの人ってパワフルですな…。2017/09/30
牧神の午後
4
スケールが違う、先年、万年単位の時の中でやっていることは果てしなく人間臭い営み。著者の方おっしゃる通りバラモンの男性優位的視点なところも鼻に付くのだけど、「人」の魔性・愚かしさ・懸命さがなんというかやってること、今と変わらんなぁ、というレベル。しかも、時に哲学的な思弁・教訓も交えてくるんだから侮れない。たしかにここにないものは何もない、というのも納得できるバラエティ。2019/05/11
舞台
4
神話はそれぞれの国の文化性の原典のようなもので、日本神話なら日常ものギリシャ神話なら浮気・不倫と、その国の特徴のようなものを表していると思います。で、このインドのマハーバーラタはと言いますと、とんでもないカオスでした。そりゃもう男が噴水みたいな射精したり、その精子かかった魚がなぜか孕んだりと、インド神話世界の意味不明っぷりは、どういう思考回路したらこんなものを思いつくんだと驚天動地の思いでした。2014/12/24