出版社内容情報
あの閃光の日から、キヨ姉ちゃんは帰ってこない…。姉の帰りを待ち続ける妹の心情を、細やかな筆致で綴る、著者渾身の創作戦争文学。小学校中学年から。
内容説明
「いってまいります」キヨ姉ちゃんが、にっこりわらって出かけた、あの日―。ひまわりの髪かざりが、わすれることのできないあの日を、静かに語り出す。わすれられない、わすれてはならない広島の原爆の記憶。
著者等紹介
那須正幹[ナスマサモト]
1942年、広島県生まれ。島根農科大学林学科卒業。主な作品に「ズッコケ三人組」シリーズ(第23回巌谷小波文芸賞)、『さぎ師たちの空』(第16回路傍の石文学賞)、『ズッコケ中年三人組』、「衣世梨の魔法帳」シリーズ(以上ポプラ社)、『絵で読む広島の原爆』(第43回産経児童出版文化賞/福音館書店)他多数
片岡まみこ[カタオカマミコ]
1968年、東京都生まれ。文化学院美術科卒業。版画作家、兼、コルク人形作家(立体イラストレーション)。雑誌・書籍・広告など、幅広い分野で活躍している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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杏子
15
行ってきます!と元気よく出かけた姉が戻らない。父の敵を打つのだと勇ましく言ってのけた姉が、自分が戦死したら妹の久江さんにあげると言った木彫りのヒマワリの髪かざり。8月6日、あの日に出かけたまま戻らなかったお姉さんを、まだ帰らないだけといつまでも待っている妹。こんな悲惨な話は数限りなくあるんだろう。作者自身が被爆しているだけに、胸にせまる。お人形にこめられた思いは、亡くなった方に伝わったろうか‥‥2014/08/28
つき
12
趣味の人形作りを通して、久恵おばあちゃんは“あの日”「行ってきます」と言って出かけたまま帰って来ない姉に想いを馳せる。 昭和20年8月6日の“あの日”。 2018/06/28
にたいも
11
ご主人が亡くなったのを機会に、思いきって生まれ故郷の広島に帰ってきた久江さん。人形を作りながら、キヨ姉ちゃんのことを思い出します。夏祭りで母が姉に買った髪飾り、8月6日の朝、にっこり笑って出かけていった姿。現代を生きる久江さんが被爆の記憶を語り始めるまでの物語。現代の子にも読みやすい物語構成。10歳くらいから大人まで。那須正幹さんの文章の巧みさを味わう。(2006年)2024/10/06
ヒラP@ehon.gohon
9
哀しいお話です。 原爆投下の日に出かけて帰ってこない姉。 姉を探し求めて命を失った母。 姉が母に縁日に買ってもらったヒマワリの髪かざり。 すべてがあの日に向かっていきます。 人形を作っていく細かい作業のように、細かく組み立てられていく久江さんの原風景。 モデルがいるのかと思ってしまいました。 片岡まみこさんの版画の挿絵もこの物語にはぴったり。 「放射能」に対する恐怖は、あまりに身近に感じる現在だからこそ、生々しく伝わってきました。2011/07/25
花々
9
広島の原爆投下のときの話でした。話しは創作ですが、著者も原爆を体験しており、その頃の悲惨な様子が伺い知れました。主人公となる二人の姉妹の絆がいいなあと思います。2014/01/14