内容説明
私たちが音楽を美しいと感じるのは、そこに生命性があるためである。統合失調症者はより深く、その生命性に通じている。音楽療法から見えてくる美の本質と生命。
目次
第1章 逸脱のなかの創造―音楽表現(ウィーンの体験から;統合失調症という病い ほか)
第2章 音のない羽ばたき―精神病理(認知論的視点;感情論理的視点 ほか)
第3章 異界としての音楽―治療実践(芸術療法としての合奏;ノンヒューマン環境論 ほか)
第4章 “生きていること”と音楽―美的経験(音楽療法と審美的体験;「境界的時間」 ほか)
著者等紹介
阪上正巳[サカウエマサミ]
1958年、埼玉県生まれ。1983年、金沢大学医学部卒。自治医科大学精神医学教室に入局。1989~1990年ウィーン大学医学部留学。同時にウィーン国立音楽大学音楽療法学科に学ぶ。国立精神・神経センター武蔵病院精神科医長を経て、2001年より国立音楽大学助教授。医学博士
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感想・レビュー
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ポカホンタス
4
勉強会で読んだ。精神病理学的な音楽論で読み応えがあった。 統合失調症の患者が作る音楽と、シェーンベルク、ベルク、ウェーベルン、ケージなどの音楽との共通点から、サールズのノンヒューマン環境論、さらにアニミズムにまで展開する奥深さがあった。丹野氏による合奏も興味深い。以前に阪上先生の講演で、少しだけ聞いたことがあるが、感動的だった。しかし最終章で、花村誠一の理論、さらにはオートポイエーシスに接続させようとしたことは残念だった。有益な展開には思えなかった。2013/02/18
釈聴音
0
音楽論として読むと、「即興」というものがどのような心的作用によって形成されているのかを考えることにつながる。「オープンダイアローグ」と関連する契機もあるように思う。2015/12/16