内容説明
武士を捨て喜三次が照降町自身番書役になってから4年近くが経つ。今では住人たちと心が通じ合うようになりすっかり町人の顔つきになった。今日も自身番に持ち込まれる苦情に耳を傾ける。そんな喜三次に好意を寄せる魚竹の娘おゆき。胸に抱きしめたいと思う心の裏に、過去の深い疵を抱え今一歩前に踏み出せない。せめて亡き友の妹香苗が幸せに暮らしているとわかれば…。喜三次の胸は鋭利な刃物で切り刻まれるように悲鳴をあげる。市井の人々の情愛を描く書下ろし時代小説シリーズ第二弾。
著者等紹介
今井絵美子[イマイエミコ]
広島県生まれ。成城大学文芸学部卒業。画廊経営、テレビプロデューサーを経て、執筆活動に入る。1998年『もぐら』で第16回大阪女性文芸賞佳作。2000年『母の背中』で第34回北日本文学賞選奨。02年『蘇鉄のひと玉蘊』(郁朋社)で第2回中・近世文学大賞最終候補作となる。03年『小日向源伍の終わらない夏』で第19回九州さが大衆文学賞・笹沢左保賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
とし
86
照降町自身番書役日誌「寒雀」2巻。髪ゆい猫字屋繁盛記とリンクしているので両方を読むと面白いですね。よいてや・おてちん・すっとの皮・ぶぶ六等々の言葉初めは戸惑いましたがなかなかいいですね。江戸の人情話ほんのり、ほんわかします。2014/10/04
ケイプ
12
照降町自身番シリーズの第二弾。シリーズものをいくつか同時に読んでいるので、話がごちゃごちゃになってしうかな?と思ったりもするけれど、読み始めればきちんとその場所に行き着ける。ある事情で武士を捨て自身番書役となった喜三次、そして喜三次に思いを寄せるおゆき、ふたりのこれからも気になる。中でも猫次屋の血のつながりのない家族の情愛が描かれている「大風のあと」にはホロリとさせられます。2014/06/22
たーくん
7
数年前、父の仇討ちをした相手は無情にも親友であり、その妹は想いを寄せる女だった―故郷も身分を捨て辿り着いた照降町で喜三次が出逢う面々。幼い自分を置いて出奔した母を憎みながら、何とか身抜きさせようと画策する文治、不器量を自覚しながらも美丈夫な男と添い続けたいと慕い続けるおてる…心に蟠りを抱えながら、前を向いて日々を必死で生きようとする人間の姿を江戸情緒豊かに描き出す傑作時代小説第二弾! 2017/07/24
Totchang
6
電車の中で読み進めたのはいいのですが、途中で涙が止まらず大変でした。あまりに悲しいおはなし。2016/02/18
baba
4
シリーズ2巻目。少しずつ照降町のお馴染みの人々がわかってきて読むのが楽しみ。捨てられた母と再会する「後の月」、女心が切ない「ででふく」家族の絆がわかる「大風のあと」、日々の暮らしの中で、傷つき、そのつもりもないのに傷つけていた事がわかる「寒雀」に余韻があります。2014/07/06




