内容説明
元号が平成に変わった最初の夏、後輩の不祥事で阪南大高野球部の甲子園へ続く道は突然に閉ざされた。彼らは、自分たちの夢をドラフト二位で日本ハムに指名された岩本勉に託した。失意と絶望の底にいても、ひとは希望を見つけ、新たな道を進む事ができる。奪われた夏。挫けなかった球児たちの再生の実話。四半世紀を経て、明らかになる事実と秘密。
目次
序章 発端―アメリカのカフェで
第1章 始動―沖縄の居酒屋で
第2章 小指―大阪の雑踏で
第3章 条件―東京の喧騒で
第4章 幸福―大阪で酔いしれて
第5章 自負―なおも大阪で
第6章 在日―大阪の温かい家族と
第7章 帰化―韓国・済州島の夜
第8章 進展―Kは何処に?
第9章 光明―明らかになる過去
第10章 小骨―Kへのメッセージ
終章 受忍―最後の訪問
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シブ吉
51
1989年7月。本格派の投手を擁し、平成初の夏の甲子園大会出場に向け、予選前の練習に励んでいた野球部の前に立ちはだかったのは、下級生による暴力事件での「出場辞退」だった。報告を受けて泣きじゃくる20人の三年生たちの中に、泣きすぎて涙も枯れてしまった「岩本勉」投手がいた。その年のドラフト二位で「日本ハム」に入団した岩本投手の高校時代を追った本書は、読み進めて行くにつれて胸をえぐられてしまいました。甲子園という目標のスタートラインに立てなかった選手たちのドラマと、その行方の果て。。。そして人生は続く。2013/10/06
ゆか
48
すごくよかった。いろいろ考えさせられる話でした。我が家の次男も、野球部。毎朝4時に起き、帰宅は11時。ベンチいりできなかったけど、その中から学んだことはたくさんあったと思う。この本の中では、自分と関係ないところ、後輩の不祥事により、突然夏の大会辞退となる。このやるせなさ。18歳の子たちに折り合いをつけさせ、その後の人生を歩ませるというのは、苛酷。後輩の親、後輩だって、背負わせられたものが、大きすぎる。せめて、不祥事を起こした子だけ処分の方が、すべての子にチャンス(不祥事の子も立ち直る)が与えられたのでは。2016/03/04
ドリル
31
元日ハムの岩本が阪南大高校だったのは知っていたが、高3の夏に後輩の不祥事で予選を出場辞退していることは知らなかった。岩本の明るいキャラからは何となく想像出来ない。その当時の元部員達を取材することから始まるノンフィクション。普通にノンフィクションに徹すればいいのだが、ちょこちょこ筆者の感情の揺れが描かれている。これがどうでもよく、何となく気に入らない。結末もノンフィクションなので仕方がないが中途半端であり、「よく書籍化出来たな。」と思ってしまうほど。非常に残念な作品。最後まで読んだ自分を褒めたい。(★★)2019/09/09
gtn
21
出自により差別を受けてきた父。無知故に、反骨精神が空回りし、その怒りの矛先となっても、じっと耐えてきた母。後輩の暴力事件により、最後の甲子園への夢が絶たれた岩本勉とチームメイト。彼らのエピソードから、人を赦すことの困難さと偉大さが伝わる。2021/12/29
たいぱぱ
20
後輩の不祥事により、最後の夏の甲子園予選を出場辞退に追い込まれた元・日ハム投手、岩本勉をはじめとする阪南大高3年生20人の話。「まいど~!」でおなじみのガンちゃんがこんな経験をしていたなんて・・・。選手達のその後に拍手を送りたい。そして不祥事を起こした後輩を赦した選手達の心に敬意を表したい。厳しい現実を乗り越え「今の俺は幸せ者だ」と言える者は輝いて見えた。完全に余談だが、コレを薦めてくれた会社の同僚は「夏をしゃす」と読んでいた・・・。2014/03/10