内容説明
慣行農業が主流のY県大沼村で、有機農業を始めた木村春菜と小原和也。ひそかに惹かれ合う若いふたりは、山奥で暮らすテツジンなる謎のじーさんのもとで修行し、本当に美味い野菜をつくることについに成功。一方、農業生産法人アグリコジャパンの部長で、村中で美人と評判の上田理保子は近代農業で大沼村を再生させようと、アグリパークなる計画を立てていた。経営効率の悪い有機農業を理解できなかった理保子は、春菜と和也の作った野菜の味に感動する。近代農業と古き良き農業、共存共栄への道が拓かれていく―。挑戦することへの興奮を教えてくれる著者渾身の長編小説。
著者等紹介
黒野伸一[クロノシンイチ]
1959年、神奈川県生まれ。『ア・ハッピーファミリー』(文庫化にあたり『坂本ミキ、14歳』に改題)で第一回きらら文学賞を受賞し、小説家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆみねこ
85
約800世帯ほどの農村・大沼。後継者のいない農家・耕作放棄地・有機農業と慣行農法、大手農業法人による農業の集約化。現代日本の農業を取り巻く問題をさらっと学習出来ました。大手の農業法人から大沼へ左遷されたアラサーの上田理保子と亡き夫に託された有機農業を守る春菜、春菜に魅かれ手伝う和也。中々面白かったです。時々スイッチの入る益子さんが良かった!2017/02/11
ぶんこ
57
農家の抱える問題、閉ざされた地域性も垣間見られましたが、ビルの谷間で育った軟弱者は、旅の車窓から眺める田んぼや畑の美しさ、きちんと人の手の入った林を見るたびに感謝の念が湧いています。せっかく育てても廃棄される野菜の事を考えると、効率ばかりにはしるのも疑問とも思うし、かといって有機農法でなくては、というのも違う気がしました。こんな風に農業の事を何も知らない者が読んで、少しは日本の農業に灯りが差してきたように感じられたのが良かった。2017/05/23
けんとまん1007
56
今のこの国の農業の状況や、そこに至る施策の背景などもうまく描かれている。直近ではまさTPPもある。人が生きていくためには欠かすことの出来ないもの、口にいれるものの重要性だ。その視点をどこに置くのかがキーとなる。単に作るだけでなく、野菜たちに寄り添うという視点、声を聞くということ。そこがなく、単に、栄養価とか、価格とかのデジタルだけでは補えないものが、たくさんある。自分でも野菜を作っているので(自家菜園)、見た目よりも、味わいや匂いのほうを重要視している。その違いは大きい。2015/07/12
ナミのママ
54
この作家さんの『限界集落』の会話があまりに面白く、似たような農業の内容かなと思いつつ、本作も読んでみました。相変わらず会話の面白さが私のツボにはまりました、何度笑ったことか。若者が手さぐりで農業に真剣に取り組むのは、前作と同じですが、今回は慣行農業VS有機農業でした。農家の方、農業を知っている方が読めば、いろいろ突っ込みどころがあるのでしょうが、お話としては未来があって、元気がもらえて、笑えて、楽しめました。個性豊かな登場人物もわかりやすく、読みやすかったです。2015/04/10
Yunemo
52
キーワードは「農」、タイトルに負けない中身のある作品。展開に無理がある点は承知の上で、それでも良かったと妙に納得感。何だか自分の生き様を、これでいいのかと突きつけられた感。頑ななまでにやりたいことに固執、それでいて全体最適なところを併せ持つ、これができないんです。農という事業、この事業を営む人、何があろうと、人がいなければ事業は成り立たず、それぞれの考え方が大枠で一致する、そんなことって一番難しい。今世の中での一番の問題点をこんな感じで表現、読了後に気持ちの中に、「自分はどうする」との引っ掛かりを残して。2015/03/15
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