内容説明
ブラジル前衛女性作家の本邦初訳!百匹の犬とともに、ブラジルの森深く隠棲する作家イルダ・イルスト。バタイユに耽溺し、数々の文学賞を受賞し、論理哲学を極める知性。狂気・ポエジー・霊性・死…ラテンアメリカの深淵なる神秘!「わたしの犬の目で」を併載。
著者等紹介
イルスト,イルダ[イルスト,イルダ] [Hilst,Hilda]
ブラジルの小説家、詩人、劇作家。1930年に富裕なコーヒー園の一人娘として生まれ、2004年にサンパウロ近郊に設けた「太陽の家」で逝去。サンパウロ大学で法学を学ぶかたわら、詩人としてデビュー。数々の文学賞に輝いたものの、20世紀ブラジル文学史にあってもっとも毀誉褒貶に満ちた文学者として知られる
四方田犬彦[ヨモタイヌヒコ]
比較文学・映画研究者。詩人。エッセイスト。パゾリーニ、ダルウィーシュ、ボウルズの翻訳がある。サントリー学芸賞、伊藤整文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞などを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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5
さまざまな時間、空間、視点、人称が混ざりあう特異な語りは、訳者の言う通りベケット的なものを感じる部分がある(表題作の語り手のひとり(?)は、死を目前にして暗闇のなかで語り続けるわけだし)。他にもカフカ、ジョイス、バタイユなどから影響を受けているよう。かなり迫力のある作品だった。2017/12/17
梅しそ
3
初読時ではぜんぜんわからんかったが再読でようやく楽しみ方がわかった。めっちゃ面白かった。犬の方がカフカチックで読みやすい気はするが、読みにくいD夫人の方がむちゃくちゃすぎて好き。ジョイスやベケットなんかが引き合いに出されてた(作家自身が生前、私が英語で書いてたらジョイスになっていただろうと言ってたらしいw)が、個人的にはブランショ読んだときに近い感触だった。実験性のつよい作風なので、誤字脱字はしっかりチェックしてほしかった。2017/02/25
渡邊利道
2
ブラジルの女性作家による中篇二作。精神分裂病の父に死ぬその直前に病院で面会して衝撃を受けたそのいかにもバタイユ的(そしてベケット)な挿話にふさわしく、作品は神を罵倒する錯乱したポルノグラフィーと言った感じで、人称がころころ変化して時間も自由に往還し、むしろ螺旋的な地獄の様相を呈する館に閉じこもって死にかけている夫との性交を拒否する女性を描く表題作と、数学と詩とを中心的なモチーフに、抑圧的な生の苦痛を抱えた若い男性教師の魂の彷徨を、ほとんど諧謔的な長詩の歌物語風に描く「わたしの犬の眼で」。2017/04/07