感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nightowl
1
岩波文庫と比較のため読了。訳者が苦労したと語る"かわい娘ちゃん"は兎も角、"入神の演技"、"ズベ公"等単語選びのセンスに今となっては古いものが...前者は旧字体が読み難く、九景の誤訳(解説より)があるもののそれ程台詞自体違和感が無く読める。岩淵達治訳ブレヒトが苦手で、同訳者による「メアリー・スチュワート」と「兵卒タナカ」はOKなので主観ではあるけれど...2024/03/25
龍國竣/リュウゴク
0
様々な階級の人間が十組、交わる。しかも最初に相手をした女が最後の男の相手になるという円環形式になっている。男は段々と社会的地位が上がるに連れ、それを鼻にかけたり、名声を自慢したりするようになる。最も高い階級の伯爵は、娼婦と交わった事実すら疑うようになる。2013/12/11
Major
0
1つの物語に出てくる登場人物が次の物語に登場してくるという形式で、10組の男女関係について、次々と綴られていく形式である。性愛の成就に辿り着くまでの過程における男女の巧みな心的駆け引き、愛を語る言葉のレトリック、そして、「騙り」の何という豊饒さであろうか。何としつこく練られた愛の「騙り」の応酬だろう。圧倒される。しかし、「こと」が終わった後に急速に愛に冷えていく人の心(性)も、作家は冷徹に見透かしている。それぞれの登場人物の社会的地位を踏まえ、実際にあったであろう物語を編み上げていく作家の技量に感服する。2012/11/15