感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
9
永らくシェリングが書いたと思われていた小説。バフチンがグロテスク・リアリズムの作品として挙げていたが、ラブレーやセルバンテス、スターンとはかなり雰囲気が違う。ロマン主義、しかもノヴァーリスの正のロマン主義とは対照的な負のロマン主義で、笑いの要素もなくもないが巨人主義的悪魔の笑い。世界の奥底に無を見るニヒリズムが濃厚で、笑殺して再生するという民衆的笑いよりは神経質な詩人芸術家の笑いに近い。救済を求めつつもう笑いの救済を信じてない。物質的・肉体的原理への貶めと高みへの憧憬のあいだを揺れ動く分、より現代的かも。2022/12/18