内容説明
何よりも心がけたいのは、シェイクスピアの台詞のリズム、舞台のリズム。二十一世紀のシェイクスピア翻訳のあるべき姿とは。日本のシェイクスピア初訳出版から125年、日本人で初めてテキストの編纂に挑み、翻訳を試みた著者が論じるシェイクスピア翻訳論。
目次
1(シェイクスピアの翻訳;シェイクスピアのテキスト;翻訳雑記;“To be,or not to be,…”をどう訳すか ほか)
2(この一冊を読み返す―坪内逍遙『シェークスピヤ研究栞』;シェイクスピア百二十周年;追悼の海―木下さんのシェイクスピア;研究社版のシェイクスピア ほか)
3(わたしの翻訳)
著者等紹介
大場建治[オオバケンジ]
1931年生まれ。明治学院大学名誉教授・演劇評論家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
371
日本におけるシェイクスピア翻訳史および受容史。坪内逍遥に始まり、福田恒存、木下順二を経て小田島雄志まで。そして、それは同時に上演史を伴うのであり、小田島にとっては出口典雄の「シェイクスピア・シアター」が文字通りの伴走者となり、ここに日本のシェイクスピア演劇は大いに花開いたのである。著者の大場はロラン・バルトの『ラシーヌ論』を引き、「作者が作家の意図から解放されなくてはならない」を肯定し、シェイクスピアにおいても同様であるとする。たしかにシェイクスピアはテクストの問題一つをとっても簡単ではない。⇒2021/11/10
Ayumi Katayama
19
そうしてようようにして読み終わった。途中、マクベスやらロミオとジュリエットやらに寄り道をするもんだから、いよいよ長丁場となる。感想。と言っても何と書けばよいのか。情報量が多すぎて目移りする。後半は『翻訳雑記』『編纂雑記』とあって、雑記ならば気楽に読めようと思ったのは誤りでこちらの方が難しかった。一番はやはり『シェイクスピアのテキスト』か。翻訳する前にどの版をメインに訳すのか。とにかくシェイクスピア作品は版が多い。主には四つ折本(Quarto)が六つ(Q1~Q6)。二つ折本(Folio)が六つ(F1~F6)2021/10/30
timeturner
7
いやもう驚いた。シェイクスピアの編纂がここまで複雑怪奇魑魅魍魎なものだなんて知らなかったよ。どんなに研究しても結局は推論の域を出ないわけで、こうなったらタイムマシンに乗ってエリザベス朝に行くしかないね。2017/01/14
viola
4
研究社の対訳・注解シェイクスピア全10巻を書き上げた著者の、翻訳論やら。内容は、専門書の中でもかなり高度です。 文学の中でも、底本を選ぶというところからが大変なシェイクスピア・・・・ここ1,200年の文学者であったら、こんな苦労はないのにね。 凄い分野に足を踏み入れてしまったなぁと感慨深いものまで感じてしまう1冊。2010/04/30