内容説明
英国十八世紀が生み出した最高傑作の一つ、ジョナサン・スウィフト作『ガリヴァー旅行記』(1726年)。諷刺と綺想に満ち、過去、多くの名翻訳者たちを魅惑してきたこの作品に「学魔」高山宏が挑戦。クラシックにして現代的な「神」訳、ここに誕生!リリパット、ブロブディングナッグ、ラピュタ、フウイヌム国などに「島居」するガリヴァーの物語をもって、英国十八世紀文学叢書はこれにて完結。
著者等紹介
高山宏[タカヤマヒロシ]
1947年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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帽子を編みます
60
寝る前の楽しみにはきつい本かもしれません。高山宏訳、言葉の端々にも目を配りシャレも利いた訳だと思います。本の装丁も好きです。ガリヴァー旅行記、第四部フウイヌム国が面白いです。ヨーロッパ文明への批判が冴え渡ります。馬の形で現れた「友愛と博愛」の種族、人類の愚かな所業との比較。納得できる部分もあるのです。ただ、それでももっと知りたい、もっと得たい、の欲を追いかける人類の側に立ってガリヴァーを珍奇なものを見る目で見てしまいます。訳者解題を読んで、完訳版の読み比べをしてみたくなりました。2021/04/17
Vincent
10
7年ぶり3回目の再読。高山先生の新訳は多様で重厚な言葉を駆使して18世紀文学の雰囲気を見事に再現。同時に新訳らしい現代感覚の言葉のいいまわしも随所にみられグッド。でも『ガリヴァー』ビギナーにはどうか?訳文の個性が強すぎて読み進めにくいかも。不朽の名作といっても300年前の作。翻訳のさじ加減は本当に難しいね。2021/03/06
しめおん
2
ファンタジー世界での冒険物語かと思いきや、かなり人間や社会に対する風刺が効いている面白い作品だった。訳者がところどころ小粋な言葉遊びを挟んでおり、下ヒンだがウマいなぁと思わされた。ファンタジーだけど、それぞれの国独特の文化がしっかり描かれていて、すごくリアルに見えた。この現実的な非現実的が作品の魅力だと思う。2022/06/07
ヨシモト@更新の度にナイスつけるの止めてね
2
はっちゃけた訳者のようで、期待して読んだ。ダジャレがこんなに訳出されていて納得しかけたが、底本の選択はこれでよかったのかどうか。フウイヌムに最初に現れたヤフーの正体は××ではなかったか、という部分が削除された版を使っているらしい。ガリヴァーを一冊だけ読むならば、この訳本はあまりお勧めしない。2022/05/13
ihatov1001
2
幼少のころに児童文学として小人国や大人国などに触れたことはあっても、完訳がここまで文学の薫り高く、風刺の効いた大人の読み物と知ることはなかなかないのかもしれません。特に第四部の「馬の国」は人間の欲深く残忍な本性をユーモラスかつ痛烈に批判しています。子供に読ませられる無邪気さと、大人の分別がうまく混ざり合った叙情豊かな作品だと思いました。2022/04/02