内容説明
三〇年前、児童読み物作家を自称して、児童文学本流から離脱したために、本隊からはぐれたゲリラ隊員であるとか、落伍したのに強がって本隊の悪口をいうだだっ子作家と言われた山中恒が、初めて大人を読者対象として刊行した著書である。この著書が、その後のほぼ八年にわたる「ボクラ少国民・シリーズ」執筆のきっかけを作る。本書の至る所にその萌芽があるが、同時に「ボクラ少国民」では取り上げられなかった戦争下の子どもコンミューンの「褻」の部分への言及もあり、日華事変下の未だゆとりのあった時代の山中恒の周辺についてもユーモアたっぷりに語っており、ある種の自伝スタイルで、文体もバナナの叩き売り的迫力に満ちている。
目次
いささか自己礼賛めいた序論
その民話的出生と講談的発育
カステラの果した学習的原点
コンビネエション文化的意義
さかさまの鬼との呪術的連帯
物怪がもたらした発作的証言
美人反応による雰囲気的恐怖
望郷的心情による断片的記憶
チャンチャンオジサン的現実
ルンペンなる名の幻想的妖怪
幽霊と鯉のぼりの類似的反応
ふし穴構造による近視的世相
絵画的欲求不満と民話的次元
町の人気ものと野武士的発想
有効なる運命談の懲罰的効果
代役に解消された感傷的初恋